2011年度読書感想文全国コンクール小学校高学年の部課題図書。
5年1組の慧(けい)は転校生を見てびっくりします。
今まで本当だと信じていなかった、こども電車での友だち、遼に現実の世界で
再会したから。
慧と遼の友情を軸に、こども電車という夢の世界をきっかけとして、
クラスメートの悩みが浮き彫りになります。
男の子たちの友情だけではなく、女の子たちのデリケートな心の動きも丁寧に描かれ、
どんな性格のポジションの子も共感できそうです。
遼の、父とのエピソードは涙でいっぱいになりました。
子どもたち、本当に懸命に生きているのです。
一見シリアスになりがちないじめの様子もリアルに描かれますが、
それぞれの思いを素直に語ることで、和解していくのですね。
夢の介という車掌さんの存在感も素敵です。
決して誘導するのではなく、あくまで子どもたちの解決力を過不足なく見守ります。
このあたりは大人として見習いたいですね。
こども電車という造形のベースには、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』があると思いますが、
高学年にとっては、国語で習う宮沢賢治の世界だけに、親しみやすいと思います。
さらには、子どもたちの夢がいっぱい展開する行き先は、まさしくファンタジーの世界。
映画を見ているような光景が拡がりました。
クラスメートの一致団結の様子も嬉しいです。