絵本ナビでも話題になっているし、「絵本の力」(岩波書店)では河合隼雄氏や大江健三郎氏が絶賛しているし、注目の絵本ということで即手にしました。わたしも納得です。内容はとても啓示的、象徴的で深く読み込むには時間がかかるかもしれません。何か目に見えない力を持った絵本という印象です。
海へおでかけした父、あずまやにたたずむ母(その表情)、後ろ向きになって窓枠を越えたアイダ、赤ちゃんの姿をしたゴブリンたち……。不思議なことがたくさん。それぞれ、それは何を意味するのでしょう。アイダはホルンを吹いて、無事さらわれた妹を取り返しますが、この意味は? (ヨーロッパではホルンを吹くことは何かが起きることを示すのだそうです。)河合氏は前述の書で、これは「喪の仕事」と書かれているのですが、わたしにはよくわかりません。
娘はセンダックの写実的なイラストにものすごく魅せられています。とくに赤ちゃんの姿をしたゴブリンたち。一人一人の表情が実に生き生きとしています。(よって何度もリクエスト。)アイダが宙に浮いている場面は、さながら中世の宗教画のような感じもします。ひとつひとつ、ページに描かれている対象は何を示すのか、わたしは絵を読む充実感のようなものを味わっています。
ただ、装丁が豪華版?ということで布。わたしは通常のイラストがそのままプリントされた紙の装丁の方が好きです。あの表紙の(カバーではない)イラストが絵本の魅力でもあると思っているので。