さきに「MOE」のセンダック特集で、この作品が作者自身のリンドバーグ幼児誘拐事件へのトラウマを描いた作品だと知ってしまっていたので
どうしても先入観ゼロでは読めなかったのですが・・・。
とにかく、怖い。
そして濃い、妖しい空気のたちこめる絵本です。
美しく緻密に描かれた絵も、うつろなお母さんの表情も、
泣く赤ちゃんの顔も・・そして海からの風。
昔、リンドバーグ夫妻の著書にのめりこみ、この夫妻の遭った事件の本もたくさん読んでいたので、どうしてもこの絵本から犯罪のにおいや
邪悪なものを読み取ってしまう自分がいました。
梯子やゴブリン、船、お父さん・・悲しむお母さん・・これらをいちいち事件と重ねてしまって。
でも「MOE」によると、幼いころにこの事件を知って恐怖を埋め込まれてしまったセンダックが、この作品を作ったことによって
トラウマを昇華させたとのこと。
そうしてみれば、最後は赤ちゃんも戻ってきて、一応ハッピーエンドの
このお話・・・センダック自身が強い思いをぶつけきった作品なんだろうな・・と。
なので、普通に親子の楽しい読書・・としてはどうも不向きな気がしましたが、こういう絵本があってもいいんだ、と思いました。
(息子は怖がりませんでしたが、かなりさらっと「さ、次の絵本読んで!」という反応でした。赤ちゃんたちはかわいいと思ったようです)
センダックが自分のために「描かねばならない」1冊だったのかな・・
と。
本当は殺されてしまった赤ちゃんへの鎮魂の意味もあったのかしら。