大阪・新世界の名物といえば、二度漬け禁止の串カツですが、実は串カツのそばにデーンとあるキャベツがおいしいのは、知る人ぞ知るなのです。
そう、キャベツは生のまま、ざくざくで食するのが一番。
ということは、キャベツの葉を「シャッキリ ムシャ ムシャ」と食べる青虫を同じということになります。
俺は、青虫か。
そうめげないで下さい。いずれ可憐な蝶々になるのですから。
この絵本、不思議な話なんです。
花の蜜をおいしそうに吸う蝶々たちをみて、「あんなもの、うまいはずがない」と怒っている別の蝶々たちがいます。
この蝶たちは、幼い頃に食べたキャベツの味が忘れられないはぐれもの。
幼い頃のおいしい記憶が成人しても忘れられないってこと、ありますよね。
彼らがエラいのは、その記憶をたどって行動を起こしたことです。
一軒のやおやに行って、キャベツを食べようとするのです。
ところが、残念ながら、今は蝶になっていますからキャベツを齧れない。
人間でいえば、赤ちゃんの時に吸えたおかあさんのお乳が大人になったら吸えないのと似ています。
ちがうかな。
そこで、やさしいやおやのおじさんがそんな蝶たちのために不思議なジュースをこしらえてくれます。
ジュースなら、蝶たちも吸えます。
と、どうでしょう。「ボワン!」と、蝶たちはやおやのおじさんに変身してしまうのです。
人間に変身してしまえば、キャベツは食べれます。二度漬け禁止の串カツは食べなくても、キャベツは食べれます。
それで元蝶のやおやのおじさんたちは、一生懸命に働いて、本当のやおやのおじさんを助けるのです。
えらいな、元蝶たち。
それをうらやましそうに見ていたのが、花の蜜を吸っていた他の蝶たち。
やっぱりキャベツの味が恋しくて、やおやのおじさんのところにやってくるのです。
そして、また「ボワン!」と特製ジュースでやおやのおじさんに変身して、キャベツを食べます。
絵本の中に、やおやのおじさんがいっぱい。
ちょっとホラーっぽい。
そんな不思議な感覚の絵本を読みながら、大阪・新世界の名物二度漬け禁止の串カツのそばでデーンと山積みされたキャベツのことを思っています。