正直言えば『赤い蝋燭と人魚』は、酒井駒子さんの絵が最高だと思っていますが、この絵本がいわさきちひろさんが病気をおしてこの世に残した最後の作品だと知って、感慨深いものがあります。
モノクロームで静かな絵が、小川未明の名作にひそやかに添えられています。
どちらかと言えば、挿絵のようでもあるのですが、この物語のためにやっとの思いで描いた絵が、饒舌であろうはずがないと思います。
この物語の絵を描くために、いわさきさんが病苦に耐えながら取材旅行をしたエピソードが文末に添えられていました。
少し長めの解説に、いわさきさんへの追悼が読み取れます。
遺作がこの物語であったことも、とても意味深い感じがします。
赤いろうそくと人魚の物語は、哀愁がいっぱいです。
人の性と人魚の健気な思いが切なく絡み合って、赤いろうそくに象徴されています。
いわさきさんの絵で赤はとても魅力的で存在感があるのですが、この絵本に色はありません。
なんだか目頭が熱くなる本でした。