デンマークのサムス島で、島民が従来のやり方を少しずつ変えていって、島全体のエネルギーを自分たちで創り出すようにしたお話(実話)。
2012年刊行。解説:井田徹治(環境ジャーナリスト)
実話をもとに作られた絵本。
巻末に製作者が本書をつくったいきさつを書いてあるが、不思議なご縁と、地球に対する危機感や愛情を感じた。
環境問題を啓発する本というと、妙に危機感を煽るような雰囲気だけを残して、不安な気持ちと、「自分一人でできることがない」という絶望感(問題が大きすぎて、無力感を感じるしかない)を感じるものが多い気がして、あまり読む気にならない。しかし、本書は、恐怖で人を動かそうとするのではなく、自発的に「自分の利益になる」「おもしろそうだからやってみよう」などという軽い、明るい雰囲気で話が進むので、読んでいて抵抗がなく受け入れられる。
エネルギーについて何にも関心がない人や、反対意見の人たちについてもしっかり描かれているが、非難することはなく、個人の意見を尊重する形で紹介されている。
そして、人々が徐々に変わっていく様子が、穏やかに描かれ、最後には大きな変化に繋がっていく様子が、楽しい。
読み終わった後に、自分も何かできることはないかしら?
とやる気も出る。
今の時代にあった、明るく楽しく穏やかな環境の絵本だ。
一人ひとりの生活や意見を尊重しながら、時間も手間もかけてよい方向に変えていく尊さがよくわかった。
巻末には詳しい解説もあり、大人もぜひ読んで欲しい。