私の手元にあるのは、1997年3月にこどものとも年中向きとして出されたペーパーバック版で、このたび出されたハードカバーとは表紙が違います。ハードカバーの表紙の絵は、物語中盤で登場しますが、この横長絵本を見開きにしたときにぴったりの素敵な画面です。表紙で登場するのはもったいない気もします。
さて、ここの紹介欄にある手紙作成場面ですが、切手を作るために散髪用すきばさみを使ってますよね。ひろこさんの前髪は、おうちの誰かがそれで切りそろえてくれるんでしょう。
この絵本の中に、おうちの人は登場しないのですが、ひろこさんが温かい家庭に守られていることは、1ページ目のひろこさんの部屋の様子から始まって、随所に描かれています。
ひとりの時間、森、手紙、動物、春の息吹、これらは、私が小さい頃、日常とは違う空気感を味わうための大事な要素でした。それが全て、丁寧に丁寧に描き込まれているこの絵本に出会えたことを幸せに思います。