雪というのはセンチメンタルですが、時に過酷でもあります。
特に雪のほとんど降らない都会の人にとって、雪はあこがれのようなもの。降ってきたら、子どもたちの歓声が聞こえてきます。
でも、雪国の人にとっては屋根の雪下ろしとか日々の生活に重くのしかかってきます。
雪が降ってきたら、空を見上げて、雪国の人たちのそんな生活に少しは思いをはせてみるのもいいかと思います。
この絵本のように。
この作品で作者の佐々木潔さんは講談社絵本新人賞を受賞しています。(1980年)
絵本を読むと、雪国の小さな駅の、雪の日の様子が淡々と描かれています。佐々木さんはきっとそんな世界で育ったのだろうと思ってしまいましたが、作者のプロフィールには東京生まれとあります。
東京で生まれて育っても、こんなにうまく雪国の生活を描かれるのですね。
雪にはそんな力があるのかもしれません。
雪が降り続く駅の朝。駅員さんの仕事は、まずホームの雪かき。お客様が滑ったりしたら、危ないですからね。でも、この駅には都会の駅のようにたくさんの利用者がいるわけではありません。
たった4人。
でも、この駅がないと、この人たちは困ってしまいます。
彼らが行ってしまうと、次は小荷物の送り出しです。
都会に住む子どもたちに故郷のお母さんから何か送ってあげるのでしょうか。
貨物列車が駅に到着しました。
小さな駅に、新しい荷物が届きました。この中にはどんなものがはいっているのでしょう。
雪は静かに、静かに、降り続けます。この絵本には文はついていません。
読者は静かに雪の音を感じればいいのです。
駅員さんは朝の乗客が帰ってくるまでに、またホームの雪かきです。
やさしい駅員さんです。
そして、夜になりました。どうやら、雪もやみました。空には大きな三日月が。
きっと音も消えた、静かな夜でしょう。
こんな素敵な「ゆきのひ」を、東京で生まれた佐々木さんはどうして描けたのでしょう。
きっと、雪の日に降ってくる空を見続けたのではないかしら。