文/山下明生、絵/長谷川義史さんのコンビの作品なので、読んでみました。
物語は、お宮の境内で行う宮相撲の話がメイン。
素人相撲大会なので、誰しもが見たいイベントなはずなのに、カワウソ村の住民は決して見ることが出来なかったという設定です。
その宮相撲は、予想通り権助が圧倒的。
あと1人勝ち抜けば優勝となるものの、あまりの強さに誰も勝負しようと土俵にあがるものがいないのです。
そんなとき、飛び入り参加した男に投げ飛ばされてしまったから、さぁ大変。
しかも、その男が、カワウソ村の者だったものだから、権助を始め追い駆けた者達に暴行を受けるのです。
最後は、少し怪談ぽく終わるのですが、それだけなら、昔話の再話位に受け止めれば良い話です。
何と、後書きを見ると、福岡県筑後地区の被差別部落に伝わる民話を、再構成したものとあり、物語を振り返った時に、その奥深さに驚愕としてしまいました。
こんな形で、部落問題に接するとは夢にも思わず、しっかりと受け止めて読み聞かせしないとならないと思った次第です。
山下明生さんが小さい読者の興味を誘うよう配慮したとあるように、昔話としても通用する作品です。
ただ、その原話に思いを馳せると、物語の持つ本質が分かる年齢の子供に読んで欲しい作品と言えると思います。
それにしても、長谷川義史さんの絵のテイストは、昔話に実に相応しいもの。
もっと、山下明生さんとのコンビで世に多くの作品を輩出して欲しいものです。