足の悪いヨーランは、つい最近、もう一生歩けないことを知り、とても沈んでいました。するとそこにリリョンクバストさんという小さなおじさんが現れて、ヨーランを不思議な旅に連れ出してくれました。それ以来、毎日夕暮れどきになるとおじさんはやって来て、ヨーランを「夕あかりの国」に案内します。その国では、ヨーランは歩くことができ、何も心配することはなく、電車やバスの運転をしたり、美味しいごちそうを食べたり、何でもできるのでした……。
「だいじょうぶ、夕あかりの国では、なんでもできるんだよ」という一言がとにかく印象に残ります。こういう一言は、子どもにとって真の救いになる言葉です。そこは、つらい思いをしている子どもたちが訪ねる安らぎの場所なのでしょう。
読後、ヨーランは自分の足のことを知ったとき、とてもショックだったと思うよ……と息子に話すと、「でも、死んでしまったわけじゃないから、何だってできるよ」という反応。自分がそうなったら、適応するまですごくつらいと思うけど……と続けると、「生きているんでしょ、なら大丈夫」と非常に積極的な答えでした。これは、くよくよ落ち込まない(おめでたい)性格である息子独自の感想なのかもしれませんが、いつも感性に訴える感想をつぶやく彼にしては、さらっと前向きで驚きました。この作品は、つらい体験をしている子どもに希望を与える作品(わたしの感想)であると同時に、生きている限りできないことはないという前向きな気持ちを示す作品(息子の感想)であるのかもしれません。
絵本自体、リンドグレーンのお話を絵本化したものですが、イラストがすばらしく、完璧に成功している例だと思いました。絵本としても完成度の高い作品です。夕あかりというイメージにぴったりの、落ち着いた夕暮れ時の描写が絶品です。