一言で言うと、「絵本の文法」に忠実になりすぎて、過重労働になってしまったぬいぐるみのくまさんのお話です。
パン屋のくまさんが朝起きてから、夜寝るまでの一日の流れが紹介されています。
最初のページでは、主人公のくまさん、くまさんのパン屋、車、パンやお菓子など、これから始まるお話のキーとなるものがアイコンのように示されます。どんなお話が始まるのか、わくわくする気持ちと、分かりやすい安心感に満ちたスタートです。
そのあとはこのくまさんといっしょに、くまさんのパン屋の一日の仕事をダイジェスト的に追っていきます。
パンを作る様子、移動販売の様子など、子どもたちが見たいであろうと思われるようなシーンばかりです。
現実的には、分業しないとあり得ないようなマルチな働きっぷりで、朝から晩まで休みなく働いているくまさんです。
しかし、このくまさんの過重労働は、子どもの読者に配慮された結果だと思います。
パン屋さんの仕事を網羅的に紹介する時に、このくまさんがガイド役となって、読者といっしょに物語を進んでいくからこそ、最初から最後まで集中してお話を楽しむことができます。これがいちいちカメラが切り替わるように別の視点が次々と飛び込んできたら、小さな子どもは話の筋を追いにくくなるのではないでしょうか。
結果として、子どもにはすんなりと分かりやすく、大人には、この働き者のくまさんが健気で面白く、とても楽しめる絵本に仕上がっていると思います。
このくまさんの働きっぷりが清々しく、夫も私も、子どもたちに読みきかせていて楽しい絵本でした。
シリーズの他の本は、ここまでのくっきりとしたインパクトに若干欠けるので、我が家ではどうもこの本が一番人気が高かったです。
世代に関わりなく楽しめますが、一番下の子が2、3歳頃から楽しんでいたような記憶がありますので、出版社の目安年齢と合わせて、年齢選択「3歳」にしておきます。