なんにもする気が起きない時。それは、逆に、自ら何かを起こすチャンス。穴があいたような気持ち、空虚な気持ち。その気持ちを大切にすることが、新しい局面を切り開くのだということに、気づかせてくれる絵本です。
この本の主人公のうさぎさんは、自分の中にわきあがる無気力な思いを空っぽのコップに例え、バケツに例えます。そして庭に穴を掘って、自ら穴に入り込んでみて思いを確認し、その静かな感じを楽しみ、穴の底から見る空に新鮮な感動を見つけます。深読みすると、まるで仏教思想の「空(くう)」の世界のようでもあります。
その穴を誰かと共有すべく、いろいろ試みるわけですが、「穴」は思いのままにはなりません。でも、うさぎさんにとっても、他者にとっても「無意味」ではないのです。
片山令子さんの、こういう発想の作品が大好きです。片山健さんが、その発想を、静かにユニークに華やかに彩っています。