私の年代の方々はご記憶もあろうかと思いますが、かつて目覚まし時計は、バネのねじを巻いてセットしていましたよね。
さて、タイトルにもなっているメアリー・スミス(ロンドンに実在)さんが主人公。彼女の仕事は、ノッカー・アップ(目覚まし屋)。
目覚まし時計がまだ普及していなかった、1920年代?のお話です。
彼女の起こし方は、細いチューブに、しわしわでかちかちの豆を詰め、頼まれたお客の家の窓に吹き付け当てます。
起こされた人は、起きた合図に必ず窓から顔を出さなければなりません。
星がまだ残る暗い時間に家を出て、一軒一軒足早に起こしにまわる。
豊かではない時代の労働者たちのたくましさが、太い輪郭の絵から伝わってきます。
メアリーが次のお客の家へ、次のお客の家へと移動するごと各ページの背景が時間とともに明けていく様子が美しく描かれています。
タイトルの文字にも、メアリーの仕事が、まさしく時間をあらそう忙しいものであることを伝えていて、オシャレだなと思いました。
メアリーさんは、毎日毎日、一日の一番素敵な美しい時間を眺めていたんでしょうね。
息子は、“朝早く起きなければならない仕事”に就いている人がいることに、あらためて気づいたようです。