「あの日」はいつの間にか、「あの頃」に変わり、「あの時代」に変わっていくのだろうか。
悲しみは乗り越えていかなければいけないけれど、「あの日」のことはいつまでたっても「あの日」のままだ。
この本は児童向けに作られている。
そして、大人よりも子どもたちに語り継いでほしいと語られている。
写真に登場するのは、家族を失い残された「家族」だ。
背景の廃墟ともに、まだ虚脱感を持った「家族」たちだ。
写真に登場する人たちにとって「あの日」はいつまでたっても「あの日」のままだろう。
意図してかカラー写真は無表情に「あの日」を写し、モノクロ写真はカラーでは表現できない精神的な「あの日」を切り取っている。
戦地をめぐりながら、平和を子どもたちに伝えようとする高橋邦典さんならではの作品。
この本はドキュメンタリーではなく、残された人々の表情を真摯に受け止めようとした高橋さんのメッセージである。