表紙とタイトルを見た時から、高級チョコレートの予感がしたのですが、本を開いたら、その世界にどっぷりとつかってしまいました。
「王国のない王女」という設定からして素晴らしい。
自分の国を持ってなくても、その名もプリンセスという王女なのです。
貧しくても気高い心と優しさ、そしてとても行動的で前向き。
愛馬プリティとのとても愛らしい暮らし。
王子様たちを魅了し、あまりに馬鹿げた取り合いと、お菓子の投げ合いに呆れ果てて、城から抜け出したプリンセス。
「君の目指す王国は僕のハートだよ」という道化師と見事にゴールイン。
たまりませんね。
ストーリーだけでなく、絵の素晴らしさにも圧倒されました。
切り絵で、影と光の舞台を絶妙に組み合わせているところは、まさに高級アソート。
見ても食べてもおいしい高級洋菓子の世界です。
シルエットが見事、シルエットに対比させた登場人物の描き方が見事、道化師からプレゼントされた赤いタイツの描き方が見事。
かつ、とても緻密な絵の構造と、パノラマ的舞台配置。
隅々まで楽しくて、読み返しても飽きません。
ストーリーや絵だけではなく、文章がとても上品。
とても高級感がある文章でした。
石井睦美さんの文章表現が、翻訳もの特有の違和感を持っていません。
たまらない一冊でした。