【内容】
この世の中で一番「悪い」事を教えてくれる本がある。わたしは、ある日、その本に出合った。悪い本は、自己紹介してくれた。そして、いつか必ず私が欲しくなると言った。誰かが居なくなれば…何かがなくなれば…そんな時に思い出すって。
果たして悪い本が欲しくなる時はいつだろうか。
人間の悪意に訴えかける悪い本と、そうならないようにと願う良心と、両方を体験できる怪談絵本。
【感想】
精神的な、高度な罠をしかけてくるような「悪い本」だと思った。しかし、人間は誰しも良い心と悪い心があって、普段から2つの間で揺れ動いている。だれでも悪いことを考える時がある。そんな時に、魔が差して悪い事をしてしまう時もある。この話は、どの年齢の人が読んでも、思い当るフシがあるはず。
ただ、自分が正しいと絶対的に思い込んでいる人は認めないと思う。また、自分の見にくい部分、悪い部分と向かい合えない時は、この本は読めない。恐怖心に負けて、ついつい悪い方に流れて行ってしまう気がする…そんなリアルな恐ろしさがある。
この本を読んで考えて欲しい、と作者は思ったのかもしれない。
誰でも心は揺れ動く。いつもいい人ではいられないし、理想通りにはならない。悪い状況から逃げようとしても、自分の心からは逃げられない。言葉が少ない本だけど、絵が雄弁に心の動きを物語っている。
人生経験を積んだ大人は、過去や現在でいくらでもこういう経験はあるから、怖い絵本だと感じるだろう。子どもたちは、未知なる心の闇や人間の醜さを想像して、怖いと感じるかもしれない。
私自身は悪い心がだいたいいつも優位なので、この絵本のいうことが実によくわかる。悪いって楽なのよ、何でも他人のせいにしてその人がいなくなればと思っていたら本当に楽だから。そうしないでどうにかするのは、しんどい。しかし…