この絵本が出て、39年。
おのき先生が亡くなって、33年。
色あせない名作です。
学生時代初めて手にした時に、日本の方の作品と気づき、驚き何度も読み直した作品です。
ダチョウの名、「エルフ」は、一息で千メートルも走る事に由来し、アフリカの言葉で「千」をあらわす言葉。
アフリカの草原で、子ども好きな名実ともに強いダチョウ、エルフ。
草原の危機を救うため、肉食獣に果敢に立ち向かい、自らの命をかける姿に感動します。
傷を負い、片足を失い、時の移り変わりと共に、かつて守ったものたちに顧みられなくなり、自分の役割を失い静かに孤高の精神を持ち続けたエルフ。
最後の力を振り絞り、その命にかえるラストは、けものとはいえ崇高な精神[誰かのために何かをする=生きている証]に読者の心を揺さぶります。
おのき先生が、この作品のモチーフとされたバオバブの大樹に、エルフが、姿を変えるラストは、永遠の命を得、高邁な精神が常に草原の生き物を見守り続けていくエルフ究極の幸福の形と思えました。
優しさとは、“真の精神の強さ”であると改めて親子共々教えられました。
ストーリーと共に、登場する生き物たちの迫力ある動きが、生き生きと表現されているこの強烈なインパクトのある版画絵が、出会った読者にとっては忘れられない感動の一冊としてなる所以だと思います。
おのき先生もこの作品を残され、バオバブの木になられたのだと思いました。