もう十数年も前の話になりますが、
この絵本の作者、北村想さんが主宰されていた劇団のお芝居を何度か見たことがあります。
それが、なんというか、印象がばらばらなんですね。
透明で、はかなげで美しい、繊細な細工物のようなお芝居もあれば、
いやらしさを突き詰めたような人間が登場し、いきなり泥水を飲まされたようなかんじのお芝居もありました。
なんと興味深い人だろう、と思い、ご自身がお書きになったエッセイなども読みましたが、
ますます、困惑するばかり。
北村想さんという方が、本当に分からなくなりました。
とりとめがない。ただそんな印象が残りました。
ひさしぶりに、この絵本で、北村作品に触れました。
うーん、やっぱり、摩訶不思議!!
絵本になっても北村節は健在です。
ちょっと人を食ったような、ユーモラスな文章と、登場人物に、思わずひきこまれます。
正直、一ページ分の文章が長いので、
子供が最後まで聞いていられるか、疑問だったのですが、
そんな心配は無用。
非常に、非常にうけました。
この絵本には、大変不思議な墨が登場するのですが、
これを中心にして展開する、多少ブラックないたずらが、子供心をくすぐったよう。
でも、ええと、そこまで受けると、それはそれで心配なような気がするんですけど…
(繰り返すようですが、いたずらがブラックなので)
最後の展開が、やはりひねりが効いていて、芝居調ですね。
それにしても、想さん、やっぱりあなたは摩訶不思議な人!