あの東日本大震災を葉祥明が描いたら、こうなるのですね。
あれはとても悲しい現実でした。
葉さんは、葉さんの世界で、あの災害を語っています。
オブラートにくるんだような風景画。
生々しさがないというか、霧の向こうに見える風景のような描写は、
残念ながらインパクトのところでは弱さを感じます。
でも、それが葉さんの描き方なのです。
オブラートは溶けていくと、後からじんわりと、しかも奥深く効いてきました。
語られていることは、津波の恐ろしさ、被災者の悲しみと精神的負担、それでも海が好きだという思い…。
主人公を置きながら、いろいろな経験、思いを繊細に描き切っていると思います。
読んで感じるという絵本ではなさそうですが、効果音楽のようにひしひしと伝わってくる、
葉さんならではの、「あのひ」の絵本です。