民話や神話をもとにした作品を手がけているジェラルド・マクダーモット。
太古の人々が信じた自然のちからを、鮮やかな色彩と明確な線で見る人に印象付けます。
彼の作品の全般に言えることですが、私たちが宇宙や地球の中ではほんの小さな存在でしかないということ、そして自然の中で役割を持ち、生かされているということを感じさせられます。
ちなみにこの本は米コルデコット賞を取り非常に有名になりましたが、その後一部の表現方法に誤解があることが問題になりました。
インディアンが祭事を行う「キバ」についての見解や、また、主人公の少年が父親がいない事が原因でいじめられ、それをきっかけに旅に出る描写について、インディアンの家族観ではありえないこと−などなど。
日本人の私にはあとでこのくだりを知るまでは、純粋に美しい表現の絵本として親しんできましたが、アメリカの歴史などを鑑みてこれらの事情を知り、ますます興味を持ったともいえます。
どうしても批判めいた意見が多く出てくるのも確かですが、私のようにそれらの諸問題に興味がなかった人間が考えるきっかけになったのも事実です。
インディアンの文化と切り離して寓話として見るもよし、太古からの言い伝えとして歴史を振り返って考えるもよし、色んな角度から見ることができる作品です。