だいこんほど日本人に愛されている野菜はないかもしれません。
その証拠に「歳時記」にもたくさんのだいこんの季語が載っています。
大根焚、大根畑、大根引き、大根洗ふ、大根干す、もちろん大根そのものも。
これらはいずれも冬の季語。
秋の季語の中には「大根蒔く」があって、大根の種まきの時期も示しています。
そして、春の季語には「大根の花」があります。
家庭菜園で大根を育てていると、この大根の花を見ることはありません。どうしてかというと、それまでには大根引きしてしまうからです。
なので、大根の花を見つけた時はうれしくなりました。
だいこんの話がいっぱい書かれている、いわさのりこさんのこの絵本にも大根の花のことが書かれています。
「はるかぜ そよそよ みどりのにおい」と、ちゃんと春の季語らしい文と絵になっています。
この花のあとどうなるか、そう種がつきます。
いわささんはその種まできちんと描いています。
普通だいこんの絵本といえば、真っ白でまっすぐ育っただいこんの話と思いがちですが、いわささんのこの絵本では花から種、そ れとたくさんの品種が写実的な絵で紹介されています。
日本にはその土地でしか育たない地だいこんが100近くもあって、見たこともないだいこんをこの絵本で見ることができます。
岐阜のもりぐちだいこんはスラッと細く、まるで杖のようなだいこんです。
いわささんはだいこんを切らしたことがないそうです。
何故なら、「だいこんがあるだけで、あしたも元気に過ごせそう」だとか。
だいこんのどっしり感がそうさせるのかも。