酒井駒子さんの幻想的な二人の少女の絵の表紙が印象的です。
『盆まねき』で小学生の女の子の不思議な体験を綴った作品のあと、
主人公を14歳の二人の中学生としたファンタジー。
とてもリアリティがあり、最初から提示される数々の謎が読み進めるごとに明かされ、
最後にジグゾーパズルの最後のピースが埋まる感覚で、一気に読んでしまいます。
養護施設で育った美月(みづき)は、ある日不思議な条件(月に関連するなど)で、
富豪の老女の別荘に招かれます。
同じようにして、月明(あかり)も招かれたのです。
その別荘で心を通じ合わせ、それぞれの不思議な力で、
二人は自分たちの、知られざる出生の秘密を知ることになります。
別荘の前のダム湖に沈んだと言われる弓月村のエピソード、
別荘に関わる人々の正体、裏山の祠・・・。
神社を中心に行われる神事をベースに、日本古来の信仰が描かれ、
日本人のDNAの琴線に触れる思いでした。
また、みづきが育ったのがキリスト教系の養護施設、あかりが育ったのが寺、と
日本らしい混沌とした宗教の狭間を見る思いでした。
特に土着信仰や神事については、作者のかなり深い造詣を感じました。
加えて、生死観や親子の愛情もたっぷり描かれ、とても奥深い余韻を感じました。