前作『カミナリこぞうがふってきた』では、カミナリに撃たれたみんながチリチリ頭になった画は衝撃的で、新しい世界観の絵本が「キターッ!」と興奮しました。あのシゲリカツヒコさんの待望の新作ですから、開く前からもうワクワクです。
今回の題材は妖怪。
ふしぎな存在自体が大好きな僕ですが、なおかつこんなうまい絵だと堪りません。息子はというと、ページをめくるごとにちょっとづつ変わっていく背景の仕掛けに、「間違い探しみたいで面白いっ!」と嬉しそうにページをめくってはまた戻ってと、喰いついていました。
この絵本の見どころは、クスッと笑える洒落っ気の利いた描き込みやダジャレです。
それから、壮絶に繰り広げられる展開と、空間の描写。大爆発が迫りくる様子はハリウッド映画を連想させます。(ふじみ交通という名前は、世界一ツイテいない男のアクション映画を連想させる)やり過ぎなほどダイナミックで、絵本の世界観を突き抜けています。
もちろん、しっかりした妖怪のキャラクターも重要なポイントです。それは、たかしよいち(高士與市)さんの妖怪創作話の挿絵を描いてこられた実力でしょう。そちらの妖怪たちは人間を突き放すほど畏れる描写ですが、この絵本の妖怪たちはどれも愛嬌があって、こどもたちにも親しまれそうです。
ますます次回作と妖怪絵本の拡がりに期待してしまいます。