カステラの歴史を辿る絵本。
画家は「時代の波に忘れ去られていく事象たちを、博物図譜のように精緻な筆致で描く」と巻末に紹介されている通り。繊細で正確な絵柄、時代を超えた美しさが感じられる素敵な絵が、時代と場所を超越した不思議な体験をさせてくれる。
大航海時代に「海の民」を自負したポルトガル人たちにより、長崎に伝えられたとされるカステラ。船乗りたちの様子や、宣教師、長崎の人たちの暮らしなどが生き生きとした筆致で描かれる。その当時の気温や匂いなども感じられそうな臨場感。今まで見たことも聞いたこともない外国のお菓子を楽しんだ当時の人たちの心情がもの言わぬ絵からその人の言葉となって伝わってくる。デザインが面白く、どの場面も考えぬかれた設計で、面白い。
日本にはないオーブンを再現する職人たちの工夫の様子は、現代も「自宅にオーブンがない」ために他の機材で工夫したり、作りかたその物を変更したりする努力を思いださせる。
オーブンとは、やはり西洋のものだと改めて思った。