アンネ・フランクという実在の少女が、ナチスの追跡から身を隠して生活して隠れ家での2年間の日記。
私が昔に読んだ短縮版は、戦争の悲惨とアンネに対する悲哀がきわめて美化されて思い起こさせるのですが、この増補新訂版という完全な日記は、生々しいだけに突然としてアンネの一生を断ち切った戦争というものに限りない怒りを感じさせるものでした。
2年という短い年の中で、アンネは心身ともに成長し、社会に対する視座についても、人を見る目にしても、少女から大人に変貌していきます。
ペーターへの淡い恋慕にしても、性的な知識をもって決して幼心とは違うロマンの中にあることを示しています。
制約された空間の中での人間関係、わずかな情報への執着、隠遁生活を支える支援者を通しての学習意欲、どれをとっても戦争の悲惨の範囲を超越して、痛々しいほどにリアルにつづられています。
アンネの日記を美化して印象付けてしまった自分を反省して、そのころの同世代に是非とも進めたい本です。