これぞ夏野菜の定番といえるのが、トマトです。
トマトは17世紀半ばに日本に伝わりましたが、最初は「唐柿」と呼ばれていたそうです。確かにどことなく柿に似ていなくもありません。
食べ物として定着していくのは昭和になってからといいます。最初は鑑賞用でした。
野菜には一つの品種で色々な仲間がありますが、トマトは原則その大きさによります。大玉トマト、中玉トマト、そしてミニトマトといったように。
私の菜園では今大玉トマトとミニトマトを栽培しています。この時期(5月中旬)にかわいい黄色い花を咲かせます。
そんなトマトの絵本がありました。
市川里美さんの『ハナちゃんのトマト』。タイトルの通り、ハナちゃんという女の子がお父さんにトマトの苗を買ってもらって、それを夏休みの間田舎のおばあちゃんの畑で育てるというお話です。
トマトの葉を虫に食べられたり、台風がやってきたり、ハナちゃんの気苦労は絶えません。
特に台風がやってくる場面、「はたけのようすをみにいかなくちゃ」と、あわてているハナちゃんの気持ちはよくわかります。
自分が育てているということは、しかもハナちゃんのように、栽培初心者にとっては台風なんてとんでもない出来事です。
自分のこと以上にトマトのことが気になります。
そういう心配があって、収穫時のうれしさは倍増するのです。
自分の苗から赤い実をつけたトマトをほおばるハナちゃんの、満足そうな顔といったら。
「おひさまのあじがする!」なんて、喜んでいます。
トマトって、その赤い色という点では得をしています。
もし、明治の時代にもっと普及していたら、夏目漱石の『坊っちゃん』に「トマト」とあだ名される教師が登場してもよさそうだし、クライマックスの生卵投げ事件もトマト投げであれば、もっと面白かったかもしれません。
ハナちゃんはいなかのおばあちゃんに栽培の苦労だけを教えてもらったのではありません。
収穫した野菜を食べることも、ちゃんと教わります。
食して初めて野菜の良さがわかるのではないでしょうか。