1977年〜1996年に出版された本を定本に、「はまべのいす」「なづけのにいちゃん」「ふとんかいすいよく」「メロンのメロディー」「どころんこロン」の5話を収録。
自宅が一軒家で、兄弟姉妹がいた子ども時代を過ごした人なら、誰もが「こんな思い出、あったかも」と懐かしい気分になるかもしれない。妹や弟が生まれる時のこと、飼っていたペットが死んだ時のこと、夏なのにプールで泳げなくて悔しい思いをした時のこと…いろんな思い出がこの童話集をキッカケに蘇りそうだ。
病気のこどもの気持ちが、いすやメロンなどの小道具を通してみずみずしく描写されていて切ない。作者自身も病気で寝ていた経験があるそうで、その時のことを思い出して描いたのだろうか。妙にリアルな感じが印象深い。
どの話も切り口は違うが、今生きていることの大切さや命の尊さが感じられる。あったかい話で心が潤う。