複数、本が出ているので、内容や絵を読みくらべてみました。
やはり…。福音館のこの本がよかったです。
母親やぎの立ち姿がとても、説得力があるんです。エプロン姿で、直立している、本来ありえないいでたちだというのに。
首のかしげかたや、歩き方までうかがわせるような、動きのある絵。
そして、留守宅へ帰って来て、荒らされた家を見るなりわっと泣き出したにちがいない、はげしく嘆き悲しむ様子が。
その後、たった一匹だけ無事だった末っ子を抱きしめて、静かにほろほろと泣く様子が。
泣き方、泣く姿が、見事に描き分けられていて、そこが一番、印象に残りました。
そして、クライマックス。
お腹いっぱいで、昼寝したおおかみ。
もくもくうごくお腹を見た母親やぎは、はさみでじょきじょきおおかみのお腹を切り開き…
見事、子どもたち全てと再会を果たし、代わりに石をつめて縫い合わせたので、おおかみはその後、井戸で溺れ死ぬ。
井戸のまわりで踊り喜ぶ、やぎたち。
「おおかみ、しんだ!」
「おおかみ、しんだ!」
台詞の、なんとストレートなこと。
私は、結末をきれいに忘れていたため、改めて読み返して、うーん…とうなってしまいましたが。
針仕事を器用にこなす、母親やぎの姿も強烈だし、みなでよろこびの踊りを踊って終わりなのも、すごいし。
余計な説明ぬきで、聞く側にいろいろ考えを広げてくれる、この、衝撃的な結末こそ、昔ばなしの醍醐味ではないでしょうか。