誰のクレヨンか? はたしてわかるだろうか。
先入観を打ち壊しながら、物語は進む。
クレヨン、というと、大人の指くらいの太さ、長さで、匂いや触った時の感じなどを具体的に思い浮かべることができる。
しかし、この絵本のクレヨンは、〇〇のものだ(絵本を是非読んで、自分で体感して欲しい)。自分が今まで体験した「クレヨン」のスケール感が崩壊。新しい感覚が植え付けられていく。
実に壮大な話で、どうってことのない内容であるが、妙な爽快感があり、やっぱり何度も読み返してしまい、何度読んでも面白くて、素敵な絵本だと思う。そしてしばらくしてからまた読み返してみたくなる。
画面の中で、クレヨンや登場する動物たちが、前のページと大きさが違ったりする。自由に伸び縮みする世界を楽しむ。大きさ、というのは、案外、見る人によって違うものかもしれない。
その時の気分によっても感じ方が違うし、結構いい加減なものなのかもしれない。
やわらかい頭で過ごせたら、きっと楽しいに違いない。
ガチガチになった心と体もほぐれて、楽になった気がする。
こんな妙な話を考えた作者は偉いと思う。
作者も、仕事をしながら、自分の使っているクレヨンを見て思いついたのか、散歩でもしながら急に思いついたのかわからないが、それを形にしてみんなを楽しませることができて、よかった。
つかみどころのない話だから、作者が捕まえなければ、今頃どこかの宇宙を漂っているかもしれない。