表紙の絵からして、なんとも恐ろしげなことろのばんばの姿が描かれていて、早くお話を読みたくなる好奇心をそそります。
日が暮れる前に、山から帰らないと、ことろのばんばにさらわれてしまうという子供にとっては、とても怖いお話。
ある日、兄妹で、山で栗拾いしていたところ兄が、なかなか帰ろうとしない。妹が帰ろうというのも聞かずにどんどん山の奥へ入ってしまい、案の定ばんばにさらわれてしまう。
その兄を助けるために、妹が、山の神様の助けをかりながら、ばんばの元へと勇敢にも自ら立ち向かってゆく。
途中、山の生き物達と妹が、会話をしたり、山の神様がお酒を喜んで飲んだり、ちょっと不思議なやりとりが多い。
さらわれた子供たちが、ばんばの持つ壺の中に小さくなって閉じ込められたり、妹が、透明になってしまったり、日本の昔話のはずなのに、ファンタジーのような魅力も感じました。
そして、この恐ろしいはずのばんばなのだが、じっくりと読んでいると、本当は、子供が大好きなのだということが窺える。
なんだか昔に子供を亡くした哀れな女が、悲しみのあまりに恐ろしい妖怪のような姿に変身して、屈折した子供への思いから子供をさらうようになってしまったのではないかと思ったのは、私だけでしょうか。
子供を取り返されたばんばが、悲しく泣いているというところが、何とも言えず可哀想な思いになりました。