花巻の出身です。
かつて賢治の童話は全部読破しようと全集もそろえましたが、代表作といえる「風の又三郎」と「銀河鉄道の夜」は長いし、映画やあらすじだけで省略してしまっていました。
いせひでこさんの絵本が好きで、青い表紙が印象的な「風の又三郎」を読んだとき、とても楽しくあっという間に読めて、改めて絵の力を知りました。充分大人になったのもありますが、賢治が好きな方たちが、その世界をしっかり読み込んで描かれているのですものね。
それで、「銀河鉄道の夜」も絵本でと、こちらも絵が大好きな東逸子さんのくもん版と、同じような体裁のこのミキハウス版を読みました。
金井一郎さんの絵は初めてで、翳り絵という手法も初めてでした。
表紙は、町外れの丘から、天の川に見とれていた主人公のジョバンニをのせて、銀河鉄道が空に上っていく場面ですが、なんとも不思議な心ひかれる絵なのです。そしてどのページも、まさしく夜空の黒青色の中に、星も、林も、花も、鳥も、波も、光も、林檎も、人も、針の穴のような白い点々で、実に細やかに美しく輝いているのです。
すごく長い時間をかけて書かれた絵の数々と知りましたが、「銀河鉄道の夜」は、ケンタウルスの祭りの一夜の出来事だったのだとすっとわかる素晴らしい絵本でした。
ただ、全文にルビを振っているせいなのか活字が大きくて、余白が少なく、文章の体裁はくもん版のほうが読みよかったです。くもん版の絵はずっと少ないですが、ジョバンニもカムパネルラも沈没船の姉弟もしゃれた都会的なまさに東さんの絵でした。