奈々ちゃん大きくなりました。
その奈々ちゃん今日はうっかり朝寝坊しちゃいます。
これでは仕事に遅れます。いそいでお化粧しなければなりません。
でも、机の上は化粧品でごった返しています。
奈々ちゃん大人になっても小さい時と同じです。
「よし、帰ったらおかたづけしよう!」
堅い決意でお家を出ます。
ほんとうにできるのかな? 今日はお友達とのお食事会ですよ?
仕事を済ませ、奈々ちゃん帰ってきました。
服を脱ぎ脱ぎ寝室に向かいます。
ここであっと驚きます。
あのメアリーがいたのです。大きくなっています。ドレスはあの時のままです。
奈々ちゃん、頭がこんがらがってきました。
「びっくりするじゃない! 泥棒かと思ったわ! 一体全体そこで何をしているの?」
十数年ぶりに会うというのにこれはないですよね。
メアリーも言い返します。
「おかたづけしているんじゃない! 今の今まで我慢してきたけどもう限界! だから出てきたのよ! 奈々も手伝いなさい!」
まるで奈々ちゃんのお母さんみたいです。
「だめ、今は時間がないの。これからお食事会にいくの。ねえメアリー、一つお願いが……」
「遅れてごめん!」
奈々ちゃんお食事会にやってきました。
「何をしていたの奈々? 早く席に着きなさい!」
と、お友だち。
「前をごめんね、通るわよ?」
と、奈々ちゃん。
「奈々どうしたの? そのドレス! お絵かきでもしていたの? それクレヨンじゃない!」
ほかの仲間もビックリ仰天!
そこで奈々ちゃんは言います。
「これしかなかったの!」
そのころ奈々ちゃんのお家では大騒動が起きていました。
それは奈々ちゃんとメアリーの言い争いが原因でした。
おもちゃたちはその声に驚き、自分の箱を出たのです。
ひょんなことでおもちゃたちが出そろいました。
メアリーはおもちゃたちをなだめ、これまでの経緯を話します。
おもちゃたちは分かったって顔をしますが、クレヨンくんはそうはしませんでした。
「ねえメアリー、そのドレスどうしたの?」
「これ? これ奈々ちゃんのドレスなの! 時間がないって言うから取替えっこしたの!」
クレヨンくんはあまりのショックに、ぽかんと口を開けたまま、ただメアリーを見つめるだけでした。
「それよりちょっと聞いて? 奈々ちゃんはお食事会から戻ったらおかたづけするって言って出かけたんだけど、その前に済ませたいの! ねえ、手伝って?」
皆でやるとおかたづけなんてすぐです。
「奈々ちゃん楽しんでいるかな?」
「ああ見えても気は優しいんだよね!」
「奈々ちゃんお金持っていったの?」
おもちゃたちは口々に言います。
大人になってもおもちゃたちは奈々ちゃんが大好きなのです。
「きっといいお食事会になっているわよ!」
そうメアリーが締めくくります。
おもちゃたちはうん、うんと言いました。
カンガルーの坊やも、ママのポケットから顔を出して、おもちゃたちと同じにうなずきました。
ただクレヨンくんだけは下を向いたままでした。
でも安心してください。
奈々ちゃんの時代では、クレヨンくんのよごれはアートになっていたのです。