静かなお話なのですが、絵本全体に優しさがあふれています。山に住むタッチィは年に一度トムサおじさんと、その孫のヤーコブとともに過ごすクリスマスの一日が大好きでした。甘いお菓子にキラキラ輝くツリー。派手ではないけれど、暖かそうな部屋の様子が、れんがの色や暖色を用いて、効果的に表現されています。
でもその次の年、おじいさんは町に住むことになり、タッチィはひとり山に残されてしまいます。もうすぐクリスマスがやってくる、ねんにいちどのおきゃくさまがやってくる‥
、気が気でなくなったタッチィはおじいさんを探しに町へと向かいます。
静か過ぎる冬の山道、小さいタッチィと比べて大きすぎる町。タッチィのためいきが絵の中から聞こえてきそうです。結局おじいさんを見つけられなかったけれど、タッチィはひとりでケーキやろうそく、マッチを山まで運びます。おじいさんの代わりに、ヤーコブのためにクリスマスのしたくをするために。
そして、そこにヤーコブがやってきて‥‥、ラストは心がほっと暖かくなります。
お話もとても優しいのですが、私はこの本の絵がとても好きです。絵からタッチィの楽しい気持ち、寂しい気持ち、悲しい気持ちが聞こえてくるような絵本なのです。すごくドラマチックな展開があるわけではないのですが、娘たちも何度も読み返しています。大好きな絵本です。