なんとも懐かしい思いに駆られる作品です。
幼い頃、母に祖父母に語ってもらった昔話のかけらたちが、心の中にちらりほらりとまいおりて来るような気持ちになりました。
お話は、焚き木売りを生業とする貧しい若者が、ある日山で鶯の良い声に誘われ、山奥へ迷い込んでしまい、ちらりとともる灯りを頼りに大きな屋敷にたどり着き、一晩泊めてもらい、翌朝留守番を家主のあねさまに頼まれます。
このあと、あねさまの残していった言葉。
なんとも魅惑的です。
若者でなくとも、十二番目の蔵を見たくなります。
それは、一の蔵から十一の蔵までが、あまりにも素晴らしい蔵だったからです。
日本の伝統的な年中行事を行う季節の節目や四季の風景が、見事に描かれています。
子どもたちが、この作品を読んでも、日本にはこんなに素晴らしいものが、昔からあったのだと再認識することでしょう。
それにしても、「見るな」ということは、若者を信じ引き留めておきたいあねさまの気持ちと、一緒にはいられないゆえ「見て帰ってくれ」という思いの交錯した複雑な心境をあらわした言葉なのではないでしょうか。
最後の一文のいきが ぽーんと さけた。″が、私をも我に返らさせました。
今年度、6年生に読んでみたいと思います。