ゆきは嫌いではありません。
北国の、ゆきの深い地方の人たちの苦労を思うと、大好きともいえません。
お年寄りが屋根の雪下ろしをしている光景をニュースでよく見ますが、なんと大変なことかと思います。
季節に一度や二度ではありません。本当に大変です。
それに残念なことにそんな町には若い人も少なくなっています。
おじいさんとおばあさんだけで、あれだけの重労働をしているのですから。
ゆきは、そんな苦労も積もらせるのです。
ゆきはまっ白で幻想的で、静かで、やわらかくて、いいものですが、北国に住む人たちの厳しい生活も忘れてはいけません。
それでも、ゆきがもっている、心をざわざわさせる気分は好きです。
いまにもゆきが降りだしそうな灰色の空。
そして、ひとつ、またひとつ降ってくる、舞い落ちるという表現の方がふさわしいかもしれません。
それをみているだけで、外にでてみたくなります。
ちょうど、この絵本の中の「いぬを つれた おとこのこ」のように。
でも、ラジオもテレビも「ゆきは ふらないでしょう」といっています。
そのあとの、文がふるっています。
「けれども ゆきは、ラジオを ききません」「それに ゆきは、テレビもみません」
だから、どんどん降ってくるのです。
町がまっ白になるくらい。
なんといっても、この絵本の絵が素敵だ。
作者はユリ・シュルヴィッツというポーランドの絵本作家。
絵に質感があって、コミカルは表現もあるが下品ではない。こういう絵は心にやさしくしみてくる。
ゆきがもっている高揚感が見事に伝わってくる。
ページいっぱいにちりばめられたゆきをみていると、やっぱり、ゆきはいいなと思ってしまう。
雪の多い北國の人のことも思いつつ。
ちいさな声で。