絵本ではなく童話です。富安陽子&降矢なな の「やまんばのむすめ まゆ」のお話が、「こどものとも」などでいくつか出ていますが、この本は、そのまゆのお話が八編入った連作童話集になっています。富安陽子さんのデビュー作です。
デビュー作なのに、変な気負いがなくて、とても読みやすい丁寧な作品です。
人間の子ども啓太と、まゆが出会うところから始まり、二人のささやかな冒険物語や、まゆと母であるやまんばの山での暮らしなどが描かれています。
まゆは好奇心旺盛なので、何にでも首を突っ込み、どこにでも行ってしまいますが、いつもやまんばがどっしりと構え、何があってもまゆをきちんと受け止めています。その二人の信頼し合い、思い合う姿が、読者に共感と温かい気持ちをプレゼントしてくれるのです。
私は、やまんばとまゆが村に行き、どっさりと春の買い物をした帰り道、
「お母ちゃん、なにが一番好き?」
急に、まゆは思いついてたずねました。
「ヤマモモの砂糖煮とまゆ」
山姥は、すぐに答えました。
というところが大好きです。学生時代に読んで、強烈に印象に残り、十数年後にこの箇所読みたさに購入しました。
『まゆとおに』や『まゆとブカブカブー』や『まゆとりゅう』が気に入っている方、是非読んでみてくださいね。
子どもが自分で読むのだと、小学校2、3年生からがいいと思います。