絵の魅力に惹かれた一冊。
監修西本氏の解説に、謡曲「鉢木」のえほんとある。
武士の道義を語る内容・・・そんなむずかしいこと・・・
そう思いながらページを繰ると
天吹雪く真白のページに、笠目深の修行僧一人、
白一色雪覆う陋屋の小窓に、人肌漏れる女一人、
もてなしを恥入る主の、仙人枕噺に映す異国のまぼろし、
吹雪の外からページ中へ、破レ家主が入れる三鉢の木色、
上野国からいざ鎌倉、延々遥々道中に武士のハレ様痛々しさ・・・。
石倉画伯の、不思議な色の世界に誘われていく心地よさ。
丹精込めた盆栽、唯一の老木を薪に・・・。
あぁ、この方に身を預けよう、そんな心境に人はなれるのか、信仰が見え隠れする本は苦手だが、主の心境が鏡のように自身に映るのがよく分かる。
唯一無二「鉢の木」を無くし、陋屋の主は何を得たのだろう? 執権に回復せられた御家に安堵? そうではない。武士の誇りか? 人を信じ抜く自分か? それとも・・・。私は深く考え込んでしまった。
ポプラ社に、感謝。