あぜみち、こみち、さんぽみち。どんどん進んでいったら……? 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は、『みち』。登場するのは様々な「みち」。いったい、どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
まっ白な画面に引かれた力強い一本の線。
それがそのまま、ぼくたちが歩く「みち」となり、「さかみち」となり、「くだりみち」や「でこぼこみち」になり。雪が降っても、太陽に照らされても、「みち」があればどんどん進み。時には「よりみち」したり、「まよいみち」になったり。
近くても遠回りでも、長い道のりであっても、「みち」があれば、進んでいくことができる。でも、「みち」が見えなくなったら……?
「それ!」
線を引くのは、自分自身。どんどん進めば、「みち」はできていくもの。そうだよね。
登場するのは、あぜみち、こみち、さんぽみち。いつも見ているなじみの「みち」。あるいはさかみち、くだりみち、でこぼこみち。ちょっと歩きにくい「みち」も。さらに、よりみちやまよいみち、まわりみちも出てきて。さまざまな風景の中に引かれる一本の線を見ているうちに、思い出すのは、あの時通った通学路や友だちの家まで続く長い坂、下を向いてとぼとぼ歩いた地面の色まで。自分の記憶の中にある「みち」も、重なって見えてきたりして。
これまでも、そしてこれからも。目の前に続いていくのは、ながいながい「みち」。それはいったいどこにつながっているのでしょう。考えるだけでも、ワクワクしてきます。
シンプルで美しい色面の構成による作品の印象が強い三浦太郎さんの最新作は、ちょっと雰囲気がいつもと違うみたい。主役は、手描きで思いっきり引かれたような力強く太い、味のある線。その道を歩いていく男の子と女の子、登場する家並みや商店街もどこか懐かしく。限られた色彩の中で描かれるのは、とても魅力的で親しみのある日本の風景なのです。
さあ、どんどん行こう。ぼくたちの新しい道! その途中で見る景色も、出来事も、感情も、みんな味わいながら。読めば、子どもも大人も元気が出てくる絵本です。
あの子にとっての、その道は。
ふだん意識せずに歩いているこの道は、子どもたちにとって初めて通る道なのかもしれない。お気に入りの道なのかもしれないし、ちょっと苦手な道なのかもしれない。前を向き、しっかりと地面を踏みしめ、生き生きと道を進んでいく絵本の中の子どもたちを見ていると、もっとまわりの子どもたちを観察してみたくなってくるのです。あの子にとっての、その道は……。心の中で応援しながら、そっと見守ることにします。がんばって!
この書籍を作った人
1968年愛知県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業後、イラストレーターとして活動。ボローニャ国際絵本原画展で入選を重ね、スイス、イタリア、スペインなど海外でも絵本を出版。絵本作品に、『くっついた』『ゴリラのおとうちゃん』(こぐま社)、『ちいさなおうさま』『おおきなおひめさま』(偕成社)、『バスがきました』(童心社)、『おしり』『よしよし』『りんごがコロコロコロリンコ』(講談社)など多数。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。