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- ためしよみ
絵本紹介
2023.07.21
夏の恒例イベント、そのひとつがお祭り!コロナ禍では中止や縮小されることが多かったですが、今年はようやくこれまで通りの開催となって各地がにぎやかになりそうです。
夏のイメージが強いお祭りですが、古来の日本では春夏秋冬、季節に合わせ行われてきました。春は豊作を祈って、秋は実りに感謝して、冬は田畑の神をねぎらって……。その中で夏は、豊作を阻む害虫や台風などの悪天候を追い払ったり、病気が流行る季節でもあったようで疫病退散の願いを込めたりといった目的があったのだとか。盆踊りは、ご先祖さまの霊を供養するための念仏踊りが起源になっているそうです。
夜に灯るちょうちん飾りや盆踊りに響く太鼓や音頭に風情を感じるのは、古くから体の奥底に宿っている日本人の心をくすぐられるからかもしれませんね。夏祭りに行く人、行った人、今のところ行く予定がない人も、お祭りを絵本で堪能するというはいかがでしょう。おばけや妖怪が登場するお祭りの絵本や、お祭りにはずせないかき氷の絵本……なかなか乙な、気になるラインナップです。
夏の思い出に、いろいろなお祭りを楽しんでくださいね!
みどころ
今日はおまつり。
おばけの一家もはりきってお出かけの支度です。
ところが、やってきたのはどろぼうです。
大変、おばけの子どもたちがつかまっちゃった!
ペンキでいろんな色に塗られて……。
「さあ、いらっしゃい。
ひとつ、ひゃくえんだよ。」
大丈夫、おとうさんおばけとおかあさんおばけがちゃんと助けにきますよ。愛らしいおばけたちが活躍する「せなけいこのえほん」シリーズが、ボードブックの新装版となって新登場。カバー袖には読み聞かせQRコードもついています。こんなおばけの子どもたちだったら、すぐに友だちになりたくなっちゃいますね。
この書籍を作った人
東京生まれ。武井武雄氏に師事。1970年、「いやだいやだの絵本」でサンケイ児童文学賞受賞。児童出版美術家連盟会員。「あーん あんの絵本<全4冊>」(福音館書店)、「おおきくなりたい<全4冊>」(偕成社)、「ばけものつかい」(童心社)、「おばけのてんぷら」(ポプラ社)などの作品がある。ほかに紙芝居、装丁、さしえなど幅広い分野で活躍中。
みどころ
『ようかいえんにいらっしゃい』『ようかいえんのかいすいよく』につづく第3弾は、夏祭りのお話。
ばけ狸のばけたと、かっぱのきゅうたと、ひとつめこぞうのじろりんが、着物をきて夏祭りに来ています。
お祭りは、ようかいたちで大にぎわい。
そこらじゅうおいしいにおいでいっぱい!
「わあ、なにをかおう。わたあめにしようかな。いかやきもいいな」
ばけたがキョロキョロしているとどこからか声がして……
「ねえねえ、おめんをかいなよ」
「おじさん、このきつねのおめんくださーい」
ばけたの代わりにおめんを注文した、声の主はだれ?
よくわからないうちにばけたは、きつねのおめんを頭につけます。
ところがなんと、おめんから舌がべろ〜んとのびてきて、にゃーこちゃんのわたあめや、おにたくんのいかやかきや、他にもおいしそうなものを友だちの手から勝手に食べちゃったからさあ大変。
友だちと言い争いになりますが、おめんはこぎつねに姿を変えて逃げていってしまいます。
みんなはこぎつねをつかまえようとしますが……?
こぎつねのいたずらを怒る「こんこんさま」登場の場面がなかなか迫力があって見どころです。
最後はばけたがお腹のたいこをたたいて、ようかい音頭の盆踊り。
ようかいでなくてもいっしょに踊りたくなっちゃいます。
それにしても、ようかいえんの子どもたちも先生も、いつも仲良しで楽しそう!
個人的には、「ばけばけやき」をちょっと食べてみたくなりました。
見返しにはようかいえんのなかまたちの紹介がありますよ。
シリーズの他の本もぜひお楽しみくださいね。
この書籍を作った人
長野県生まれ。『よるざかな』で第11回小学館おひさま大賞優秀賞を受賞。主な作品に『このおもちゃ、もういらない!』(チャイルド本社)、『だめだめすいか』『はるじゃのばけつ』『おちばきょうそう』『はらぺこブブのおべんとう』(以上、ひさかたチャイルド)ほか。挿絵に『一円大王さま』(ひさかたチャイルド)がある。
みどころ
「びょ〜ん びょ〜ん びょ〜ん」
わごむまつりへようこそ! そういって迎えてくれるのは、大きな鳥居にぶらさがった大きな大きなわごむ。どうやらここが入口みたい。わごむまつりって、いったいどんなお祭り?
神社の中には屋台がずらり。おめん屋さんに金魚すくい、ソースせんべいにしゃてきまで。どこか懐かしいけれど、これが全て「わごむで遊べる」というのだから驚きです。さあ、手もとにわごむをたくさん用意して。遊び方のメモを見ながら、わごむで金魚すくいをしたり、欲しい商品を狙ってわごむを飛ばしてみたり。焼きそば屋さんでは、わごむを豪快に使って大ごちそう! ページをめくるたびに違う「わごむ遊び」が登場しますよ。
普段なにげなく使っている「わごむ」だけれど、確かに子どもたちにとっては魅力的。「のびる」「おく」「とばす」……いろんな性質を使った楽しい絵本の誕生です。あんな遊びも、こんな遊びも。まさにお祭り気分。 表紙にだって、大胆にわごむを通せば……!?
「あそび」や「笑い」をテーマに、たくさんの作品を手がける絵本作家・つきおかゆみこさんによる最新作。まるごと一冊あますことなく「わごむ遊び」を満喫できるこの絵本。みんなの家で大活躍してくれそうですね。
この書籍を作った人
1978年、愛媛県生まれ。武蔵野美術大学造形学部デザイン学科卒業。在学中より、江戸期の「あそび絵」を研究。また、「あそび」や「笑い」をテーマにした作品を制作する。食べることが大好きで、洋菓子やパッケージのデザインも手がける。作品に『はらぺことのさま』(あかね書房)、『くいしんぼうず』(くもん出版)、『さかさまつり』(佼成出版社)などがある。
みどころ
暑くなると恋しくなる、キーンと冷たい夏の甘味、かき氷!
中でも「天然氷のかき氷」というと、特別な響きがしますね。
天然氷がどのように作られているのか、皆さんはご存知ですか?
「天然氷は、自然の冬の寒さを助けに、ほとんどが人の手間でつくられるのだ。」
この絵本は、1995年〜2015年の間埼玉県長瀞の阿左美冷蔵を取材し、その内容をもとに作られたフォトドキュメント絵本。
長瀞では、明治時代から氷池を使って天然氷が作られてきました。
今では天然氷を作る氷屋さんは全国で数件、埼玉県では阿左美冷蔵だけだそうです。
代々工夫されてきた道具や、のこぎりで切った氷の荒々しく美しい断面など、興味深い写真がたくさん紹介されています。
また、落ち葉を取り除く毎日の丁寧な作業や、天気のタイミングをみた氷の切り出し作業など、良い氷を作るためのたくさんの手間をかけた作業の様子がわかります。
そして絵本で紹介される天然氷で作ったかき氷の写真の美味しそうなこと!(表紙の写真も最高ですね。)
中のページで紹介される、色とりどりの蜜がかかったかき氷。焙じ茶、きな粉、みかん、落花生ミルク、さくら、などなど、どんな味なのか食べてみたい!
眺めるだけでも涼しくなる幸せな写真を、ぜひ手に取って見てみてくださいね。
代々受け継がれる製氷業の仕事を知ると、この天然の「冬の味」を夏に口にすることが、なんて贅沢なことなんだろうと感じます。
口の中であっという間に溶けてしまうひとくち。今まで以上に味わって食べたくなりますね。
文:竹原 雅子 編集:木村 春子