箱のなかにはいっているのは?!
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インタビュー
2023.08.17
群馬県立ぐんま昆虫の森で、設立当初より働く筒井学さん。広大な里山のフィールドを生かした、体験プログラムや企画展示に長年関わっています。そんな筒井さんのもう一つの顔が昆虫写真家。前編ではライフワークのひとつとなっている写真絵本シリーズについて伺います。生態・飼育の知識を駆使し、年月をかけて撮影された決定的瞬間がたくさん! 制作の舞台裏を伺いました。
この人にインタビューしました
1965年北海道生まれ。1990年より東京豊島園昆虫館に勤務。1995年から1997年まで昆虫館施設長を務める。その後、群馬県立ぐんま昆虫の森の建設に携わり、現在、同園に勤務している。昆虫の生態・飼育・展示に造詣が深く、昆虫写真家としても活躍している。著作は、『虫の飼い方・観察のしかた(全6巻)』(共著、偕成社)、『クワガタムシ観察辞典』(偕成社)、『小学館の図鑑NEO 昆虫』『小学館の図鑑NEO 飼育と観察』(共著)など多数。
出版社からの内容紹介
日本最大のトンボ、オニヤンマ。
眼は宝石のエメラルドのように美しくかがやき、力強く空を飛びます。
オニヤンマが見られるのは、緑が濃い森林と澄んだ小川がある環境。
そんな自然が残された人里があれば出会えるトンボです。
オスは元気なうちは常にほかのオスと戦い、メスを探して交尾に挑みます。
メスは何度も交尾と産卵を繰り返し、多くのオスたちの子孫を数千個の卵に託すのです。
産み落とされた卵から誕生した小さな幼虫は、様々な小さな生物を食べて成長していきます。
そして、幼虫自身もほかの生物に食べられてしまいます。
過酷な生存競争の中で生き残ったわずかな幼虫は、長い水中生活を経て成虫へと変身します。
いよいよ初フライトの瞬間です!!
―― 筒井さんは昆虫の図鑑をはじめさまざまな飼育観察の本に関わっていますが、『カブトムシがいきる森』『セミたちの夏』『さすらいのハンター カマキリの生きかた』『オオムラサキと里山の一年』の写真絵本シリーズは、昆虫の一生がよくわかる作品として根強い人気がありますね。今年は新たに『夏の小川にかがやく宝石、オニヤンマ』が加わりました。
ぐんま昆虫の森をフィールドに、昆虫が生活する様子を少しずつ撮り下ろし、シーンが揃ってきたら1冊にまとめるということを繰り返しています。オニヤンマはあの大きさや迫力といい、エメラルドグリーンの目、黄色と黒の縞の美しさといい、私の少年時代の憧れのトンボです。虫捕りに夢中だった自分でも、小学校低学年くらいじゃなかなか手に負えない。小学3年生でようやく初めて捕まえたんじゃないかな。私にとってそういうトンボでした。
―― 1冊の絵本にどれくらい時間をかけて撮影するのですか?
セミやカマキリは5、6年でしょうか。オニヤンマについて言えば構想は10年前です。なにしろ飛び回る生き物だし、捕食、交尾、産卵、ヤゴとしての水中の生活など、撮影場所は多岐にわたります。コツコツと必要だと思うシーンを撮ってきましたが、いちばんのハードルは、卵と孵化の瞬間をおさえることでした。
―― SNSでも「決定的瞬間だらけ」「どうやって撮影しているのか」などのコメントを見かけました。
実はトンボの撮影には、トンボの習性を利用した様々な技術があって、インターネットで検索すると詳しい人たちがいろんな情報をアップしています。例えば小川の上を飛行するオニヤンマを上から撮ったシーンは、扇風機を使っています。扇風機がグルグル回る波長とトンボの羽音の波長が近いので、仲間だと勘違いしていったん空中で静止してくれる習性を利用した方法ですが、トンボを撮る人たちにはよく知られたやり方なんですよ。
撮影時は、経験や知識を総動員して臨みますが、うまくいかないときはインターネットの情報が参考になることもあります。今回のオニヤンマは、卵の撮影が最難関でした。
たとえばトンボでもシオカラトンボなど種類によっては、産卵期のメスを捕まえて水中に腹の先を入れればスルスルと産んでくれるのですが、砂地を飛びつつ産卵管を砂に刺しつつ産卵するオニヤンマの場合はそうはいかない。じゃあどうするかというと、産卵したと思われる一帯の砂をすくってその中から卵を探すしかない……。これがなかなか見つからないんです。でもインターネットを見るとやはりその方法で砂から卵を採取し、撮影に成功している方がいるんですよね。「やっぱり、この方法でできるはずだ」と、ルーペを買ってまたチャレンジするのですが見つからなくて……。
―― 砂の中を目視で探すのですか? トンボの卵って小さそう……。
1ミリメートルに満たないので小さいですよ。砂粒と一体化しているし、どうしても見つけられなくて四苦八苦していると、同僚が「あるはずだ」と探してくれて……そしたら見つかったんですよ。「やっぱりあった!」と(笑)。不思議なもので1個見つかるとコツを掴んで、見つけられるようになりました。砂粒と同じくらいの大きさだけど、砂とは比重が違うので、水中でも少し違う動き方をするんですね。目で追っていけるようになるとその後は数十個採れて、シャーレに移し、孵化まで映像化することができました。
―― 卵の色の変化や、割れて幼虫が誕生する瞬間が感動的です。
同時期に同じメスから生まれた卵は、だいたいポツポツとバラけつつも近い時期に孵化するはずなので、いくつかのグループに分けて観察を続けました。1つ2つ生まれはじめると、他のものもそろそろだろうと検討がつく。朝見て、午前中早い時間もまだ生まれてなくて、午後になって生まれていたら、時間帯の検討もつきますよね。それでいくつか当たりをつけたら睨めっこの時間を作り……。卵が割けて、小さな白い前幼虫があらわれる瞬間を撮影できたときは嬉しかったです。「よし、これで(絵本を)作れるぞ」とエンジンがかかりました。
―― 他に苦労したシーンはありますか。
苦労と言えばどれも苦労して撮影したものばかりですが、トンボの写真に詳しい方が「どうやって撮ったんだ」と驚かれるかなと思うのは、オスが腹部の先をメスの頭に連結させて、木の高いところへ飛んでいくシーンですね。これは本当に奇跡的な一枚です。
前後のシーン……“川をパトロールをしていたオスが産卵中のメスを見つけて背中に飛びかかり”、“高い木の上で交尾をする”。この両者の間をつなぐシーンが欲しかったのですが、なかなか撮れないなと思っていたところ、最後の最後に奇跡的に撮影できて、ぎりぎりのタイミングで入れることができました。
―― どうやって撮影したのですか?
トンボのオスは、交尾中や産卵中のメスを見つけると、邪魔をして自分が最後に交尾をしようと挑みます。それは、最後に交尾をしたオスの子孫が卵に受け継がれるからです。ですからオニヤンマのメスを捕まえて、産卵のような仕草を繰り返しさせていると、オスがガシッとメスの頭を押さえ込んで、「連れて行こう、連れて行こう」とするんですね。そのときにカメラの前で2匹にピントを合わせ、シャッターを押す準備ができたらパッと手を離す。そうして飛び立っていくシーンが撮れたのです。昆虫に演技はできないので、そういった「設定」作りをする場合もあって……。生態や特性についての知識をフル活用し、ありとあらゆる知恵を絞ります。 “悪知恵”はずいぶん働くようになりました(笑)。
でも交尾のシーンだけは、小細工はできません。高いところに飛んでいってから交尾を行う習性がありますから、オスとメスの連結まで確認できても、カメラで追える場所で交尾を行うことはほとんどないのです。ただ、周囲の樹木の状況によっては、まれに望遠レンズで追える高さで交尾することがあります。掲載した写真は7−8mほどの樹上でしたが、フルサイズで900o相当のレンズでやっと捉えたシーンです。だいぶ以前ですが、100o相当のレンズで撮影できる高さで交尾シーンも目撃していますから、運もあるんですけどね。
―― 生きている虫を撮影するために工夫を重ねているのですね。
こだわってきたのは、その昆虫が生きる自然環境の中で、自然光の元で撮影するということです。例えば「いかにもオニヤンマがいそうな小川」があって、実際にオニヤンマがいる川を撮影したとしても、例えば草が伸び過ぎていて川の空気感がわかりにくかったり、伝わる写真になるとは限らない。野外を写真に収めたときに、自分がイメージしたような「オニヤンマがいる小川」になるかどうかはなかなか難しいです。
かといって自然界で撮影した写真の流れの中に、一枚でもスタジオ撮りのような再現写真が入ると、流れが壊れてしまう。そのバランスはとても難しかったです。大切にしたかったのは昆虫そのものだけでなく、昆虫がいる周囲の空気感も含めて。ですから、撮影するときの背景にはこだわりました。
―― 生育環境がよくわかるような背景を撮るということでしょうか……?
そうですね。オニヤンマは有名なトンボですが、意外と知られていないこともあります。例えば十分に成長したヤゴがトンボに変わる直前、陸地に移動して一定期間を過ごすことはあまり広く知られていません。上陸後は、川岸の湿った落ち葉の下などに身を寄せてじっとして、羽化まで何も食べずに過ごします。この時期のヤゴと、舞台となる小川周辺を定点でとらえることにもこだわりました。30ページから37ページにかけての羽化シーンは、同じ川の側から撮った写真です。
こういった背景へのこだわりは、撮影者の自己満足かもしれませんが、「本当にその虫がいる場所の空気感」を大事にし、「いた!」「見つけた!」というワクワク感を写真に誠実に閉じ込めたいからこそです。雑草ボウボウでなんということもない風景でも、いかにも散策したくなるような、虫がいそうな環境があるんですよね。一連のシーンの流れの中で、切り取り方によっては、その何気ない写真が重要な一枚になったり……。そういった「虫がいそうな環境」の撮影を常に意識しています。
出版社からの内容紹介
自然が豊かな、里山の雑木林でしか出会えない、大きくて美しいチョウがいます。
その大きさと輝くような紺色の美しさは、見た人の心に強く焼きつきます。
オオムラサキは、日本の国蝶にも指定され、雑木林を代表するチョウですが、美しい成虫たちの命は一瞬の夏ともに尽きてしまいます。
けれども、次の世代の幼虫たちは、ゆっくりと育っているのです。
しかし、そんな幼虫たちに、天敵が容赦なく襲いかかり、多くの幼虫が命を落としてしまいます。
木々が幼虫を育て、それを食べて天敵も生きる。
それが、自然のありのままの姿です。
豊かな自然があれば、オオムラサキは食べ尽くされることはありません。
オオムラサキの一生を通して、素晴らしき日本の自然「里山」を考える写真絵本です。
シリーズを通して伝えたいテーマのひとつにそれぞれの「虫たちが生きる環境」があります。このシリーズで取り上げた虫たちはどれも花形で、当然、子どもたちに人気のある昆虫たちです。だからといって、それを襲う天敵を悪者としてとらえてほしくないのです。
『オオムラサキと里山の一年』の中に、オオムラサキの幼虫が鳥に捕食されるシーンがあるのですが、じゃあ鳥は悪者なのかというと決してそうじゃない。すべての生き物は互いに食って食われて当然の中で共に生きていることを、子どもたちが感じてくれたら……と。大事なのは「オオムラサキやオニヤンマが生息できる里山の自然の豊かさ」だと、感じてもらえたらと思います。
出版社からの内容紹介
カチャカチャ バキバキ ブロロローン!
今年もカブトムシの1年がはじまりました!
夏の雑木林をにぎわす人気もの、カブトムシ。
しかし、カブトムシにとっての夏は、一瞬にして過ぎ去ってしまうのです…。
交尾を終えたメスには、たいせつな仕事が待っています。
メスは、ひとつぶずつ、ていねいに卵を産みつづけていきます。
そして、いよいよふ化の瞬間。
とても大きなカブトムシの、小さな、小さな、幼虫時代のはじまりです。
めぐってゆく季節の中で、命は世代を越えて続いていきます。
ぐんま昆虫の森で、1年を通じて撮影した写真で、人間がつくりだした雑木林とカブトムシとの関わり、身近な自然や生物との触れ合いを考える写真絵本です。
―― 同シリーズの他作品についても聞かせてください。最初に刊行されたのは『カブトムシがいきる森』ですね。
はい。ぐんま昆虫の森では、毎年昔ながらのやり方で落ち葉掻きを行い、一箇所に落ち葉を集めて、木枠の中に詰め込みます。その中で落ち葉が腐って夏には腐葉土となり、そこから多いときには600匹近いカブトムシが誕生します。
カブトムシは人の手が加わって維持・管理されてきた雑木林という「二次的自然」に依存する昆虫なんですよね。カブトムシのくらしと人の関わりを、1冊の本で表現したいという思いを実現させることができました。これ以前は共著も多かったので、自らの文・写真だけで1冊作ることができ達成感を感じた本です。
出版社からの内容紹介
日本の夏は、いつもセミたちとともにめぐってきます。
いなかでも都会でも、その声はひびきわたります。
でも、セミたちの命は、夏の終わりとともにつきてしまいます。
成虫が生きていられるのは、たった2週間ほどなのです。
翌年の梅雨に、残された卵から幼虫が生まれ、土の中をめざします。
しかし、待ちかまえていたアリたちにつかまってしまい、ほとんどの幼虫が命を落としてしまいます。
命からがら、土の中にもぐりこんだ幼虫は、ゆっくりと成長をして、生まれてから5年目の夏に、ようやく地上をめざします。
いよいよ成虫へと羽化するときがきました。
メスのセミが卵を産んでからは、6年もたっています……
都会のかぎられた自然の中でもたくましく生きるセミたち。
長い年月をかけて引きつがれていく命をとらえた写真絵本です。
――2作目のテーマがセミですね。生まれたばかりの真っ白な1齢幼虫の可憐さに驚きました。小さな幼虫が地面に落ち、自力で土に潜り込むなんて……知っているようで知らないことばかりでした。
2ミリほどの幼虫たちはほとんどが地面に落ちたときにアリに食べられてしまうんですけどね。地中で5年もの間、脱皮を繰り返しながら過ごして、地上に無事に姿を現すのは、全体の卵の数に比べればごくわずかです。
ぐんま昆虫の森は体験型教育施設として、(新型コロナ流行期を除き)毎年のようにセミの羽化の観察会を行ってきました。子どもたちがその神秘的な瞬間に目を丸くして見入り、羽化してまもないセミのすきとおるような美しさに心を奪われているのがわかります。虫を見つめ、手に触れ、いのちを実感することで、「自然とは何か、いのちとは何か」……を、きっと子どもたちは感じ取ってくれるはずです。
『セミたちの夏』はシリーズの中でいちばん読まれています。樹上で卵から孵り、地中の幼虫の生活、長い年月を経て地上に顔を出し、木に登り、羽化して飛び立っていく……。こんなふうにセミの成長をじっくり写真絵本にしたものはあまりないみたいで。制作中は細かくコツコツ撮ることに集中していましたが、結果、たくさんの方に読まれる本になり良かったなと思っています。
出版社からの内容紹介
冬をのりこえ、春をむかえたスポンジのような、ふしぎなかたまり。
前の年のカマキリが産み残した卵のうです。
1つの卵のうからは、200ぴきものの幼虫が生まれます。
生まれたばかりの幼虫は、すぐに独り立ちをします。
カマキリにとって、「生きる」ということは、そなえたカマで、えものをとらえ、食べていくこと。
しかし、カマキリもほかの生き物たちに、えものとして、ねらわれているのです。
生き残れるのは、わずかな幼虫……。
オオカマキリの一生を通して、きびしい自然界の「食物連鎖」のしくみを、とらえた写真絵本です。
――『さすらいのハンター カマキリの生きかた』では狩りの瞬間にワクワクしました。
カマキリが生きる背景には、カマキリのえさとなって命を落とすたくさんの虫たちの存在がありますが、カマキリにカメラを向けていると、カマキリ自身もより大きなハンターにはつねに食べられてしまう立場なのだとよくわかります。
例えば、絵本にはシジミチョウやバッタなどを得意のカマでしっかり捕まえるシーンがある一方、クモやカナヘビにおそわれる瞬間もとらえています。交尾を終えたオスがメスに頭から食べられてしまうこともあるんですよ。生きることの目的に迷いがない昆虫のたくましさに感嘆せずにはいられません。
―― どの本も、昆虫のありのままの姿が写っているのですね。
自分が子どもの頃、どれだけカブトムシやセミ、カマキリ、チョウ、オニヤンマに憧れていたか、それらについて知りたいと思っていたのか……。昆虫図鑑をすり切れるまで読みましたが、意外と細かい生態は載っていないことも多いんですよね。
虫への憧れを引きずったまま写真を撮っている者として、表現の道を探っていたときに、図鑑や飼育観察本だけでなく「写真絵本作り」に舵を切れたことは、幸運だったと思います。子どもの目線になって、それぞれの昆虫のすばらしさと自然界の奥深さ、実際にこんな暮らしをしているんだよということをストレートに伝えたかったということに尽きます。
実は、「長く売れる良質な写真絵本シリーズを作ろう」というコンセプトで企画が走り出し、編集者にこの本のサイズ(22.5×20cm)を提案されたときは「えっ」と戸惑いました。正直な気持ちを言えば、せっかくだから写真をもっと大きく使える絵本にしたかったのです。でも編集者は、子どもが持ち歩きやすい、ランドセルに入る形がいいと。今になってみると見開きで横長の写真を使うのも悪くないし、縦長の写真も使える。コマ割りの写真もおさまるし……逆にこの判型で良かった、今はこの形以外考えられないと思うくらいに気に入っています。
私にとってこの写真絵本シリーズを手がける編集者との出会いは大きな出来事でした。そして彼とは『イモムシとケムシ』図鑑も一緒に作ることになります。
後編へ続く
インタビュー・文: 大和田 佳世(絵本ナビライター)
編集: 掛川 晶子(絵本ナビ編集部)
ぐんま昆虫の森ってどんなところ?
平成17年に群馬県桐生市にオープンした昆虫をテーマとした教育施設です。当時の群馬県知事 小寺弘之さんの発案と、日本の昆虫施設の生みの親 矢島稔さんが関わることで誕生しました。広大な里山に近代的建築が融合した、世界にも類を見ないテーマパークです。
昆虫の森での仕事について教えてください!
昆虫の森での業務は多岐にわたります。朝一番から展示ケースのメンテナンスを行い、ガラスふきや餌交換といった作業は平成17年の開園以降ずっと続けてきた朝のルーティーンです。展示ケースはそれぞれの昆虫が生息する環境をイメージして製作しています。入れ物に昆虫と餌が入っているだけみたいな状態のものは、私の中では「展示」ではないのです。手間がかかっても、子どもたちが見てワクワクするような展示ケースづくりと維持管理は、もっともこだわっている部分です。
昆虫飼育もこの仕事での大事な要素です。季節を問わず、年間を通して展示を続けるには、それぞれの昆虫の生態や生理を熟知していなければなりません。今まで様々な昆虫の飼育をしてきました。現在はそれぞれの展示種に担当者がいますから、全体の飼育状況を見守りつつ適宜指導をする立場です。ただ、私自身何か虫を飼っていないとさみしいですから、今はハンミョウとヘラクレスオオカブトを自ら担当として飼育を行っています。
そして、昆虫を飼育するバックヤードをお客様に案内する「飼育室探検ツアー」では、それぞれの昆虫の特徴や飼育の様子をプログラムとして実施しています。