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インタビュー

2023.11.08

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村上八千世さんの絵本『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』 トイレ=恥ずかしいという意識は変えられる!

日本トイレ協会が制定した11月10日の「トイレの日」、国連が定めた11月19日の「世界トイレの日」と、11月にはトイレにまつわる記念日がふたつもあります。絵本を通して、トイレや排泄の大切さについて考えてみませんか? 『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』(ほるぷ出版)は、子どもたちのトイレや排泄に関する先入観をユーモアたっぷりに塗り替えてくれる絵本です。朝日新聞社の本の情報サイト「好書好日」より、作者の村上八千世さんのインタビューを紹介します。
(インタビュアー:日下淳子、写真:黒澤義教)

この人にインタビューしました

村上 八千世

村上 八千世 (むらかみやちよ)

大阪府生まれ。アクトウェア研究所代表。トイレなど排泄環境をはじめ、子どもの保育・教育環境に対する提案を、建築、設備などのハードと保育・教育プログラムなどソフトの両面から行っている。著書に『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』など、うんこのえほんシリーズ(ほるぷ出版)のほか、『保育園は子どもの宇宙だ!トイレが変われば子どもも変わる』(北大路書房)など。

  • うんぴ・うんにょ・うんち・うんご

    出版社からの内容紹介

    うんこは、はずかしいものではなく、生きていくうえで自然で大切なこと。だから、いっしょにうんこを考えてみよう。楽しいネーミングをしたりアイディアいっぱいで、気持ちよくトイレにいけるようになる絵本。


    ●巻末に「うんこの種類特大ポスター」が付いています!
     

    ◇学校で・・・「今日のうんこはどれに似ていますか?」子ども達にうんこの種類を説明する実践ツールとしてご活用ください。

    ◇ご家庭で・・・トイレの壁などにはって、毎日の排便チェックの目安として利用して下さい。家族全員でぜひどうぞ。

昔のトイレは汚かった。今はトイレがきれいでも……?

───絵本『うんぴ・うんにょ・うんち・うんご』(ほるぷ出版)は、しつけとしての説明ではなく、子どもの好奇心に寄り添い、ユニークさを交えながら、うんちについて語られているのが特徴です。描かれるうんちには目も口もあり、親しみが感じられます。

排泄物って、一般的には汚い、臭いと言われていますが、実は、健康のバロメーターなんです。でも大人から、口にするのもはばかられるものと教えられているから、「うんこ」と言うのも照れくさがる子は多いです。でもあるとき子どもがふざけて、「うんこの五段活用!」と言いながら「うんも」「うんど」と話していたのを聞いて、これなら楽しく口にしてくれるんじゃないかと思いました。便の状態というのは、ブリストルスケールという国際的に使われている分類方法があり、7段階に分かれています。子どもたちにはちょっと多いので、色や形、匂いで4段階にわけて、「うんぴ」「うんにょ」「うんち」「うんご」とネーミングしました。それに、せべまさゆきさんが楽しい絵をつけてくれました。

───村上さんは幼児施設環境のコンサルタントとして、小学校や幼児施設のトイレ事情を研究してきたそうですが、絵本を作ることになったきっかけは?

もう20何年か前、まだ独立して仕事を始める前に、トイレメーカーから依頼を請けて、全国の学校のトイレを調べたことがあったんです。そうしたら、特に地方は汚いトイレが多くて。校舎は頻繁に改修することができないので、何十年も前の設備を使っていることも多いのです。便器は和式で、床は水洗いするようなタイル、臭くて、汚くて、壊れていても直さない。それで学校ではトイレに行かない子が多いような状況でした。

ところが、改修してきれいなトイレになれば行くようになるかと言うと、それでも何割かはまだトイレに行けないんです。特に男子は、大便のときだけ個室に入るので、学校でうんちをすることで、いじめやからかいの標的になってしまう。それで友だちに気づかれないように行くとか、我慢して家に走って帰るようにしている、ということが実態としてわかってきたんですね。

排泄しない人間なんていないのに、その当たり前のことが恥ずかしい。つまりトイレの設備の問題ではなく、そのときこれは教育の問題なんだなということがわかりました。大人が排泄のことを語るときは、「はしたない」「人前で話すことではない」というようにネガティブな表現になることが多いです。これはいけないと思いました。それで、希望する学校に出向いて、トイレや排泄に関する出前教室をするようになりました。「排泄って恥ずかしいことじゃないんだよ」「からかうようなことじゃないんだよ」という話をしていたら、それが話題となって、絵本を作ってみませんかというお話をいただいたんです。

トイレに行きたがらない子の意識を変えたい

───子どもたちの「恥ずかしい」という感情を払しょくするのは、ただのしつけの話だけでは難しいですよね。どんな工夫をされたのでしょうか。

絵本を作るにあたって一番に考えたことは「何を言ったら、子どもたちは恥ずかしくなくなるのか」ということです。ただ大人が「うんちは恥ずかしくない」と言ったって伝わりません。うんちそのものにフォーカスして、状態によって健康がわかったらおもしろいんじゃないかと思いました。うんちは汚くて人が嫌がるもので、出てこなければいいと思っている子どもたちも、色や匂いを確かめることによって自分に役立つなら、見てみようと思ってくれるんじゃないかと。それで、うんちの状況を解説したり、「きょうはどんなのでるかな?」とうんこの観察日記をつけることを提案したりする内容の絵本にしました。

実は絵本を作るのはこれがはじめてで、ラフは何枚も何枚も描いたんです。内容が決まるまでけっこう苦しみましたね。それこそ、ウンウンいいながら(笑)。なるべく説明っぽくならないよう、楽しく読んでもらえるよう考えました。絵本の内容をちゃんと理解するのは低学年からですけど、低学年より下は、うんちの話をするだけでニコニコしてくれます。高学年になってからだと、もううんちに対して汚い、見たくない、聞きたくもないという概念がついてしまって、それは簡単には修正されない。だから、高学年になるまでに、うんちは当たり前のもので恥ずかしいことではないという感覚や、自分の排泄物を見る習慣をつけてもらえたら嬉しいです。この絵本が、そのきっかけになったらと思います。

───習慣になってしまえば、当たり前のことになって恥ずかしさもなくなりますね。

この絵本の後に、『うんこダスマン』(ほるぷ出版)という絵本も描いて、排泄をうながす体操まで作りました。振付も私が考えたんですよ(笑)。でもこれが好評で、保育園や老人ホームで踊ってくれています。最後に「うんち、いってきまーす!」というところがあるんですが、これをやると子どもは、そのままにこやかにトイレに駆け込んでくれるんです。素直ですよね。

絵本を読んだ後、家庭でも排泄物について話題にしてもらえるといいなと思います。毎日便の状態を聞いてあげたり、「今日はお母さん、うんぴだったよ」と話したり。家族で排泄の話がおおっぴらにできるというのは、仲の良い証拠だと思うんです。冷え切った家族から、うんちの話は出てこないでしょう?(笑) うんちが黒っぽかったり、かたければ、野菜が足りないのかなとわかる。習慣づけることで、一生の健康管理もできますし、大病しないことにつながると私は思っています。

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