絵本『ぼくの ともだち おつきさま』をはじめ、やさしく美しいファンタジーの数々で、小さな子どもから大人まで魅了し続けている絵本作家アンドレ・ダーハンさん。どの作品にも共通しているのは、読んでいる間のゆっくりと優しく流れる幸せな時間。どのような想いを込めて描かれているのでしょう。
今回、最新作『おつきさまと ちいさな くま』の発売を記念して、インタビューが実現しました!
アンドレ・ダーハンさんからのメッセージをお楽しみください。
●大切なのは誰かを愛すること。最新作『おつきさまと ちいさな くま』
アンドレ・ダーハンさんの最新作はお月さまが大好きなこぐまが主人公のお話です。
- おつきさまと ちいさな くま
- 作:アンドレ・ダーハン
- 訳:きたやまようこ
- 出版社:講談社
こぐまは、お月様が大好き。なんとか会いに行きたいと考えます。
「空と海がひとつになるときに飛ぶんだよ。」と教えてくれたのは、友だちのイルカです。
それは、お日様が沈むとき。お月様に会えたこぐまは幸せです。
お月様が住むのは“夜のくに”。
こんどはこぐまが、お月様に地球を案内します。高い山、遊園地、楽しく遊ぶ子どもたち――。
こぐまは、ふと考えます。
「また夜のくにに、行きたいな。そのときは、どうしたらいいの?」
お月様の答えはなんだったでしょう?
すてきな、“おやすみなさいの絵本”になっています。
─── 最新作『おつきさまと ちいさな くま』に込めた想いをお聞かせいただけますか?
大切なのは、誰かを愛すること、相手に共感し、コミニュケーションすること。そうすることで、世界はうまく回っていくと、私自身が信じていることを表現したかったのです。そもそも、大好きな友人や家族といっしょにいると、世の中がうまくいく以前に、まず自分の人生が楽しいでしょう? それが、世の中のすべてのスタートだと思うのです。私が描くキャラクターたちには、敵意がなく、愛に満ちているでしょう?
─── お話をお伺いしていると、エピソードそのものの愛らしさだけではなく、もっとおおきな視点で作品のテーマを感じることができるようです。
今回の絵本もそうですが、ダーハンさんの作品にはお月さまやお星さまがよく登場しますね。それはなぜでしょうか?きっかけとなった思い出などがあるのでしょうか?
月と星のない夜はありません。月が姿をあらわすと、夜が始まります。星は喜びにあふれたすばらしいものです。彼らは輝いています。
とくに、月には思い入れが強いのです。月はどんなときにも、そこにいて、私たちを見ていてくれる存在です。絶望していても、頭が混乱して冷静に考えられないときも、月はいつも通り、静かに空から見ていてくれます。
ご存知のとおり、『ぼくの ともだち おつきさま』は、私の最初の絵本作品です。
はるか昔、私はコルシカの海辺にある私の小さな家の中で腰をおろし、自分の人生について――そこにいる自分の存在について考えていました。
その夜は非常に暗く、聞こえるのは波の音が浜辺で砕ける音だけでした。私は何となく憂鬱な気分でした。そのとき、巨大な火の玉が丘の向こうに出現しました。それはオレンジ色の月でした。それはあまりにも大きくて、さわれそうな気がしたほどでした! 私はもうひとりではありませんでした。そしてこのときのなんともいえない気持を、絵本に表現しようと思ったのです。
私は月が好きです、そして月も私に対して同じような思いを抱いていると、そのとき感じました。だから、月は私の友だちなのです。その体験から、私はしばしば月を主人公にするようになりました。そして読者もそれを気に入ってくれていることに気づきました。
気がつくと、きみがいた・・・。夜のまんなかで、「ぼく」が出会ったのは「おつきさま」。その瞬間から、心にしみる美しい物語がはじまります・・・。