最新作『どうぶつ どのみち いっぽんみち』を発売されたばかりの中村牧江さん、林健造さん。『ふしぎなナイフ』や『ありさんどうぞ』など、お二人の作品はちょっと不思議な面白さが魅力。子どもも大人もあっと驚かされてしまいます。
今作は、なんと最初のページからずーっと一本線でつながっているんです!!どこからそんなアイデアが生まれてくるのでしょう。お二人にお伺いしてみました。
どうぶつにあいたくなって、さあ出発! 一本道をたどっていったら、「あ、うさぎ」草のにおいも感じながら、そのまままっすぐいったら、今度はひつじ。ちょっとひと休みして、お次はきりん。さてさて次は…?次々に登場する動物をめぐって、最後は地球に生きる同じ生き物たちに感謝!おはなしもたのしみながら、最初のページからずーっと、一本線をなぞって親子で遊べる絵本です。
─── この絵本をつくろうと決められた、なにか、きっかけのようなものはありましたか?
中村:以前に『もしゃもしゃ』(福音館書店/品切中)という絵本をつくりましたが、こんどは違うかたちで、絵本全体を1本の線でつなぐことができればおもしろいというような話をずっと2人でしていました。林が単体の動物を針金でいくつか作っていたこともあり、それらを生かせないかと考えました。
─── 絵本が完成するまでに、アイデアの変化やそのほかどんなことがありましたか?
中村・林:はじめは歩いている人間が次々に動物に出会うことを考えていましたが、そうすると絵もストーリーも複雑になるためどうやったら単純化できるか、悩みました。
─── 絵本に登場する動物をどのように選ばれましたか? 他にはどんな動物がいたのでしょうか?
中村:ライオン、ぞう、かば、などは他の絵本に登場することが多いので、選びませんでした。また、形が似ている動物が出てこないように構成を考えました。
─── いっぽんせん(一筆描き)の動物はどうやって描くのでしょうか?
林:どうやってというより、すべての生き物を1本線で魅力的に描きあげるのが理想です。
─── 描きにくい動物はいますか?
林:体に模様がある動物ほどむずかしいです。でもああでもない、こうでもないと考えながら図形を完成させていく、その試行錯誤の過程が楽しいのです。
─── いっぽんせん(一筆書き)の魅力はなんでしょうか?
林:線が途切れないで生き物の形ができあがっていくのが楽しいです。それだけでなく、形が造形的に美しくなければならないので、その工夫がむずかしくもありおもしろくもあります。
─── いっぽんせん(一筆描き)という絵のアイデアがあって、文章を考えられたと聞きましたが、文章はどのようにして生まれたのでしょうか? 苦労された点などはありましたか?
中村:最初の方でお話したとおりなのですが、色々考えているうちに、主人公を自転車に乗っている姿にするというアイデアを林が出したのをきっかけに、すべてが解決しました。
「自転車に乗っている人間」は林がすでに針金で作った物があり、人間だけをつくって形の変化を出すよりたやすかったのです。この時点で主人公を小さなナビゲーターにして、動物の絵を大きく生かす単純なストーリーにすれば良いと思いました。ですから後は、地上から水中へと動物を選んで話をまとめ、私の方は楽なものでした。林は大変でしたが...。
─── この絵本はどんなふうに楽しんでもらいたいですか?
中村:ありえない話ですが、あくまで無心にひとふでの旅を楽しんでほしいです。
林:線を指先でなぞっていくことで、自分もひとふでで絵を描いているような気持になってもらえるのではないかと思います。
─── ありがとうございました!
最後に『どうぶつ どのみち いっぽんみち』の編集担当者さんからも制作の秘密をお伺いしました。
編集担当より:最初に「こんなのどうかなあ」とラフを見せていただいたとき、「わぁ!」と、気持ちがなんというか、パァっと明るくなったのを覚えています。『もしゃもしゃ』も読んだことがあって、「『ふしぎなナイフ』もだけど、これもおもしろいなあ」とずっと思っていましたし、こんどはいっぽん線(一筆描き)で絵本を、ということにとても心惹かれました。
はじめのラフは文章が入っていなかったんですよ。判型(サイズ)ももう少し小さくて縦長で。先生方といろいろとご相談をして、いまのような絵本になりました。
でも、最初から決してかえることのなかったのは、「いっぽん線ですべてをつなげる」というところ。当然、私も絵本が完成する前にいっぽん道をたどってみました。でも、これがなかなか難しくて(苦笑)。はじめは指でなぞっていたんですが、途中で「あれ、ここ通ったっけ?」となってしまい、カラーのマーカーを持ち出して、最初からやり直しました。(もしみなさんが「あれ?」となったら、いまは消せるマーカーも売っていますので、それでたどってみるとわかりやすいかもしれませんね)
それから、印刷所の方には、「ページがかわるところ、できるだけいっぽん線がつながるように、高さを合わせたいんです!それがこの絵本の大切なところなんです!」と強くお願いしました。印刷所の方も、「わかりました、がんばります!」と(笑)
おかげさまで絵本ができあがって、担当としてもホッとしております。みなさんに楽しんでいただければ幸いです。あ、最後に。林先生&中村先生による『ありさんどうぞ』も、オススメの一冊です。ぜひご覧ください