●『しろねこくろねこ』もほぼ同時期に発売されました。 byきくちちき
─── この『やまねこのおはなし』は絵と文を別の方が担当されたとは思えないほど、お話と絵がぴったりで、すごく心地よかったのですが、製作の途中でお二人でのやり取りはあったんですか?
きくち:(どいかやさんに)かやさんからは「こうしてください」というようなお願いはほとんどありませんでしたよね。
どい:そうですね。ほぼ、ちきさんにお任せでした(笑)。
─── どいさんの文章を最初に読まれたとき、きくちさんはどんな印象を持ちましたか?
きくち:かやさんが今までに作られている絵本の感じとは違う、新しい作品の感じがして、とても新鮮な印象を受けました。でも、何度も何度も読んでいく内に、生き物と自然が一緒に生きていく場面などで、「やっぱりかやさんだ…」と感じる部分もあって。かやさんの作品なんだけど、なんだか新しい…と思いました。
─── 文字で書かれたものを絵に表現する作業ってとても大変だと思うんですが、きくちさんの絵は色だけでハッとさせられる、感情と色が一致している感じを受けたんです。そういう描き方をされる方って少ないんじゃないかな…と思ったんですけど、きくちさんはどうやって文章を自分の中に消化していったんですか。
きくち:もうひたすら描きます。ぼく、1ページ描くのに何十枚も描き続けるんですよ。編集さんが「これで行きましょう」っていってくれても、「まだ描けるはず、いいのができる」って描いちゃうんです。
─── 特に好きなページはありますか?
きくち:そうですね…。表紙にもなったこれが描いていて気持ちが良かったですね。これも何十枚も描いている中で、出来上がった1枚で、描き終えたときは本当に嬉しかったです。
どい:私もこの絵をみて、「これ表紙にしようよ」って言いました(笑)。あと、このジャンプしているところも好きですね。そして最後のタンポポの絵は感動です!
─── 描いている間に難しかった部分、苦労したところはありますか?
きくち:実は、ちょうど同じ時期に学研さんからもう一冊、ネコの絵本を出すことが決まっていたので、「どうやって描き分けたら良いんだろう…」というプレッシャーもあって、最初の絵を描き始めるのにすごい時間がかかりましたね。
─── 『しろねこくろねこ』ですね! この絵本もとても色遣いが大胆で、装丁もすごく凝っていて大好きな作品です。発売時期が重なったのは偶然だったんですか?
きくち:そうなんです…。
どい:私、同時に進んでいたのは知らなかったんですよ。それで『やまねこのおはなし』も最初は「やまねことしろねこ」っていうタイトルをつけていたんです(笑)
きくち:そのタイトルを聞いたときは、「さすがにこれはヤバイ」…と思いました(笑)。
─── すごい偶然ですね〜。
きくち:初めての絵本なのに、ひとつは『しろねこくろねこ』でもうひとつは『やまねことしろねこ』だったら…。どんなネコ作家なんだ!?っていわれますよね(笑)。
でも、『しろねこくろねこ』で、何百枚もネコの絵を描いていたので、『やまねこのおはなし』ではそれが終わったときの開放感も手伝って、肩の力を抜いて絵が描けました(笑)
─── ネコの歩いている感じとか、背中をちょっと丸めている様子とか「この画家さんは巨匠だ!!」って思ったんです。何十枚も描いているという話を聞いてなんか安心しました。
きくち:ヘタなんで、そう簡単にかけないんですよ…(笑)。ネコもうちにはいないので、近所のネコとかを見ながら、イメージを掴んで描いていました。
─── 社内の無類の猫好き達に見せたら、皆、一様に唸ってました(笑)。『しろねこくろねこ』派、『やまねこ』派に分かれたりして…(笑)。
きくち:ありがとうございます。僕自身はあまりテクニックを持ち合わせている方ではないので、気持ちよく描くことを常に意識してました。
─── 他の方の文章に絵を描くことは作絵をご自身でされるのとはまた違った難しさがあると思うんですが…?
きくち:そうですね。特にぼくは人のお話にあわせて絵を描いていくというのが初めての経験だったので、すごい大変でした。でも、自分の中だけで作っているよりも、より幅が広がるというか…。自分では思っていない事も絵に描こうっていうチャンスが生まれて、そういう意味ではすごく勉強になりました。
─── どいさんは一番最初に『やまねこのおはなし』の絵を見て、どう感じましたか?
どい:私、絵を見て泣いちゃうくらい感動しました…。自分が書いたお話なのに(笑)。
私のイメージからずっとすごいものが生まれて、とてもうれしかったです。
(きくちさんに)ありがとうございました。
きくち:いえいえ、こちらこそですよ〜〜(笑)。