「ツリークライミング」って知っていますか。木にロープをかけ、道具をつかってするするとのぼっていく木のぼりの方法があるんです。 ジョン・ギャスライトさんは『おもしろい外国人』としてテレビ番組で人気者だったカナダ人。タレント活動の一方、ツリークライミングを日本に紹介する活動をしています。ジョンさんはつらいことが重なった子ども時代、ツリーハウス作りに救われた体験がありました。これはツリーハウス作りや、ツリークライミングをとおして、ジョンさん自身と周囲の人が笑顔でいっぱいになっていくお話です。
中部大学のなかにある森で、子どもたちがツリークライミング体験をする場面から本書ははじまります。「こんにちは。きょうはみんなでツリークライミングをするよ。オッケー?」とジョンさん。「はーい!」「うん!」「やだ・・・」「ママ・・・」不安そうに親を振り返る子も混じって、まずは目の前の木とご挨拶。木と触れ合い、コミュニケーションしてからのぼりはじめます。最初はおそるおそるだった子どもたちですが、のぼりはじめて表情がみるみる明るくなっていきます。「わっ! あがった!」「やったあ!」「遠くまで見える!」「気持ちいいね〜!」・・・。ジョンさんはダウン症の子どもや、重い障がいで車椅子の人のツリークライミングも実現させていきます。
ほがらかそのもののジョンさんですが、じつはつらい子ども時代がありました。お酒を飲んで暴力をふるう父と、母の離婚。一時施設に預けられ、母の実家に移ってからは学校でいじめられます。10歳でAS(強直性脊椎炎)という難病もわずらい、それからずっと痛みとつきあい続ける日々。ジョン少年が悲しみ、未来をあきらめそうになるとき、いつも味方でいてくれたおじいちゃんが言う言葉が心に残ります。いじめに悩むジョンと周囲のいじめっこたちに「一緒にツリーハウスを作ろう」と声をかけたのもおじいちゃんでした。
今は日本で共に暮らすよき伴侶(弘子さん)と、二人の息子という幸せな家族があるジョンさん。日本の材料でツリーハウスを作りたいと、あっと驚くものをつかってツリーハウスを作りました。いったい何だと思いますか? 答えは本を見てくださいね(口絵のカラー写真を見てびっくり!)。 本文にも写真がたくさん入っていて、小学生3・4年生からおすすめ。むずかしい漢字にはルビがふられています。手にとって読み始めると、すぐにひきこまれますよ。「おーい! 一緒に木にのぼろうよ」というジョンさんの明るい誘い声が、木々の間からさわやかな風とともに聞こえてきそうな本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
テレビタレントのジョンさんは、木に登ることで、いじめや虐待、病に傷ついた心が癒された経験から、日本に初めてツリークライミングを紹介しました。ジョンさんの朗らかな顔に隠れた、つらい過去と不屈の精神を紹介します。
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