「投げ出さないことだよ 苦しいときほどさ―」
いつも元気でたくましかったとうちゃん。そんなとうちゃんの突然の死。六年生の陽介は、かあちゃんと陽菜と三人で暮らすことになります。生活のために忙しく働くかあちゃんとまだ幼い妹陽菜を守ることに懸命になる陽介。けれどもまだ小学生の自分にはうまくいかないことも多いし、やりたいこととの折り合いをつけるのも難しい、家族を最優先に守りたい一方であきらめなきゃならないことも増えていく…。 そんな陽介に、かあちゃんが言うセリフがぐっときます。 「できないことを“しかたない”ってあきらめるんじゃなくて、いま大事だと思うことを、かあちゃんは自分で選択したの。選んだの。」 「あきらめるんじゃなくて、選ぶの。考えて、ちゃんと自分で」
お話は「おかゆ」「水きり」「くちば色」「いつか」「兄弟」「神輿」の連作短編集。 陽介の前に立ちはだかる、複雑な家庭環境の少年との交流、クラスで一番人気のある女子の万引きの場面、幼なじみのお兄ちゃんがいじめられている現実…どれも考えさせられるエピソードばかり。自分の痛みを抱えながらもその1つ1つに向き合い、なんとか力になろうとする陽介。やがて、「神輿」の季節がやってくると、陽介はとうちゃんが大好きだった神輿担ぎにはじめて挑戦することに決めるのですが…。
現代の子どもたちの心情を生き生きと描き、子どもたちの心をぐっと掴む筆致で人気のいとうみくさんの最新作。『糸子の体重計』で日本児童文学者協会新人賞を受賞し、2013年刊行の『かあちゃん取扱説明書』では小学生の共感を大きく呼びました。今後の作品も楽しみな、近年どんどん注目が高まっている作家さんです。
表紙いっぱいに広がる真っ青な空は、主人公の陽介を包みこむかのようにやさしく、見上げると胸の奥から力が湧いてくるような、そんな存在のように感じられます。 さまざまな現実にぶつかり、悩み、揺れる主人公と同世代の高学年から中学生の子たちへ。 また真っ直ぐに一歩一歩前に進む陽介の姿は大人の心にもじんわりと効いてくるようです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
父親の突然の死により、母親、妹とのちいさなアパートでの三人暮らしがはじまる。誰かを守ろうとすることも、守り切れないと泣くことも辛い。痛みと孤独を背負った少年の、その一歩一歩がかなでる鮮やかな心の成長の物語。
いとうみくさんの児童書は、子供達の気持ちや真理を丁寧に上手に書かれているなぁといつも思います。
読み手の子供達にとって、自分とはまた違った環境に置かれた本の中の登場人物達の気持ちを考え想うことは、人としてとても身になるものに思います。
健気な登場人物達。。。でも親の気持ちとしては、子供達がみんな恵まれた温かい環境の中で育って大人になってほしいと祈らずにはいられません。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子9歳)
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