宇野亜喜良さんの絵による、「踊りたいけど踊れない」「壜の中の鳥」「上海異人娼館」に つづいて、今回寺山修司と初共作の下谷二助さんの絵による「かもめ」です。 宇野さんの絵とはまたちがった味わいの魅力が展開されています。 下谷二助さんは、雑誌や週刊誌、広告などを中心に活躍されていて、絵本も出されています。 風刺の利いた思いがけない発想と、言葉や小説世界の行間を読む、力ある絵が人気です。 寺山修司の文章とぜひ組んでいただきたいと思っていた方の一人でした。ご本人もとても魅力的です。 お話は、ダミアのシャンソン「かもめ」を聞きながら、50年前にかわした約束と、二度と会うことのなかった恋人を別々の人生の中で想いつづけた水夫の恋の物語。 寺山修司は、宇野さんのほかにも谷川俊太郎さん、和田誠さん、横尾忠則さん、荒木経惟さんほか親交のあった作家やアーティストは数多く、また直木賞作家江國香織さんなど、寺山修司の「フォアレディース」シリーズや少女詩集などを小中学生のころに読んでいたという方々もたくさんいらっしゃいます。 生誕70年という時期に重ねて、「寺山修司ってやっぱりいいね」と、新しい楽しみ方をしたい4冊目の絵本です。映画を見るように頁をめくる楽しみが味わえること間違いなしの本です。
私は20代の頃、東京の中野で寺山修司さんとお会いしてお話を聞いたことがあります。寺山修司さんはとても気さくな方でした。その後も渋谷でたまたまお見かけしたことがありました。それだけにこの本は私にとってひじょうに愛着があります。私はこの本を飽きるほど繰り返し読ませて頂きました。これは何よりもイメージをふくらませることの喜びを教えてくれると思います。寺山修司さんの世界はとても難解なところがありますが、人生においてイメージをひろげることがどんなに楽しく、豊かなことかということをつくづく感じさせてくれます。この本を繰り返し読むことによって生きているということが楽しくなると思います。 (水口栄一さん 60代・その他の方 )
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