赤毛の性悪狐ルナールが大活躍するフランス中世の動物叙事詩が、しなやかで正確で美しい訳文と、「白と黒の魔法」と讃えられる魅力的な挿絵によって、鮮やかによみがえる。
福音館古典童話シリーズ、4年振りの最新刊が
ひっそりと本屋の棚に並んでいて
思わず「おぉーっ!」と手に取りました。
ずっしりとしたこの重み。「読むぞ!」と箱から取り出すトキメキ感。
やっぱり好きです、このシリーズ。
『これぞ、本!』と思わせるこの存在感は、
今の時代、ますます貴重に思えます。
さて、「狐物語」というと、同じ福音館書店の「きつねものがたり」を思い出したのですが、読んでみると全く別の物語でした。
こちらの「狐物語」は、フランス中世で生まれた数々の狐物語(ルナールという狐を主人公に、色々な人が物語を書いていたようです。)を
レオポルド・ショヴォーが編集しなおしたものです。
この主人公の狐ルナールが、本当にずる賢い!
周りの動物たちを次々に騙し、裏切り、王様まで騙してしまうのですから。
しかし、当然いつもルナールだけがいい思いをするわけではなく、彼はたくさん失敗もするのです。
ルナールとさまざまな動物たちが繰り広げる攻防合戦は
時には、野生のままの生々しさを感じさせ
時には、まるで人間社会そのままのように描かれ
長い物語も飽きることなく読み進めることができます。
ルナールのずる賢さに、親子で思わずあきれたり、
やり返されて「ほらみたことか!」とニヤニヤしたり。
この世の中は、残念ながら
決して「良いこと」「美しいこと」ばかりではありません。
うちの子もこれからの長い人生の中で
誰かに裏切られて悔しい思いをしたり、涙を流す日々が
全く無いとは思えません。
そんなことを含めて、
ルナールの物語を通して
子どもと一緒に色んなことを感じながら
有意義な読み聞かせタイムを過ごすことができました。
たくさんの章に分かれているので、
毎日少しずつ読み聞かせするのに向いている本だと思います。
挿絵は作者ショヴォー本人によるもので、独特の雰囲気があって
これもなかなか面白いです。(読みきかせしている途中で、子どもがイラストに見入ってしまい、なかなか次のページが開けない…なんてこともたびたびありました。)
意外だったのは、訳者が
絵本「ぐりとぐら」の絵などで有名な山脇百合子さんだったこと。
翻訳もなさる方だったとは今回初めて知りました。 (R☆さん 40代・ママ )
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