フランスの寄宿舎が舞台の愛くるしい「マドレーヌ」シリーズ、その作者・ベーメルマンスが「マドレーヌ」を生み出す前に残した、太陽のような絵本が届きました。
大きなソンブレロと赤いポンチョを着たあかちゃんのペドロ。 話せる言葉は、まだ「ダダダダ!」だけです。 ペドロは、今日もニワトリにトウモロコシを食べられないよう見張りながら機関車キト号を待っています。この小さな真っ赤な機関車が大好きで、毎日眺めているのです。
ある時、市場へ家族と一緒にものを売りにでかけた時のこと。 ちょっと目をはなしたすきに、ペドロはキト号にちょこんと乗り込んでしまいます。ペドロと車掌さんの微笑ましい交流やアンデス山脈を越えて、キト号が向かう先々で待っている素敵な出会い。予測不可能な小さな男の子ペドロの大冒険から目を離すことができません。全編を通して、土の温もりを感じられる単色で描かれているにもかかわらず、生き生きとした色彩豊かな南米の風景が目に浮かんできます。そして、気づけばお人形のように可愛いペドロに夢中なのです。
作者のルドウィッヒ・ベーメルマンス(1898-1962)は、16歳のときにオーストリアからアメリカに渡っています。ホテルで働きながら、部屋の壁やカーテン、メニューの裏やナフキンなど至るところに絵を描いていたベーメルマンス。その絵が編集者の目にとまり絵を描く仕事についたのだそう。自由な魂を愛でるように描く勢いのある絵。ユーモアたっぷりの愛情満ち溢れた作風は、みる人の心を陽気に躍らせます。本作は、1937年頃、作者が南米エクアドルを旅したときに乗車した思い出深い機関車キト号が題材になっています。
実は1938年の初版以来、未翻訳で、長い間古洋書に埋もれていたそうです。訳者のふしみみさをさんが、この絵本の創作の源となるベーメルマンスの写真を偶然に発見し、2006年に日本での出版につながりました。幻の作品の待望の復刊となります。絵本の巻末にあるふしみさんのあとがきも必読です。
今日も照りつける日差しの中、アンデス山脈を越えてやって来るキト号とキト号を待っている、愛嬌たっぷりのペドロが目に浮かぶようです。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
あかちゃんペドロは、まいにち、トウモロコシの番をしながら、機関車「キト号」が走ってくるの見ようと楽しみに待っています。 ペドロが見とれている間、ニワトリたちはここぞとばかりにトウモロコシをつつきます。
ある日ふとしたことからキト号にひとりで乗り込んでしまったペドロ。ペドロがしゃべれるのは「ダダダダ」だけ……。 南米エクアドルを舞台に、ペドロの冒険とペドロをとりまく人々のあたたかさを描く。
ペドロという小さな男の子が主人公。ペドロは駅でお姉ちゃんが目を離したすきに、一人で大好きな機関車キト号に乗り込んでしまいます。さて、そこから、ペドロの3泊4日の旅のはじまり、はじまり〜。客観的には、迷子なのですけどね(笑)。
作者に、こんな小さな子を一人で放り出してしまうの?と言いたくなってしまいますが、実は読んでいるうちに、こんなことも許せてしまうほど、のどかな町と人の雰囲気なのです。土色一色で描かれた素朴な絵が、おはなしに合っています。
エクアドルの町と素朴な人々が醸し出す空気感が とてもよく感じられる絵本です。このお話は作者のベーメルマンスが南米のエクアドルを旅したことがきっけかで生まれたものだとか。ベーメルマンスは、エクアドルが大好きになったんだそうです。その「好き」という感じがにじみ出ているような気がします。
そして、「ダダダダダ」しか しゃべれない小さな子にも、お手伝いとおぼしき仕事(干しているトウモロコシをニワトリから守る)があることにびっくり。お父さんも、お母さんも お姉ちゃんも家族全員、仕事をしています。
最初はあまり思わなかったのですが、繰り返し見ているうちに、ペドロの笑顔にぞっこんになってしまいました。
ベーメルマンスは、もちろん あのマドレーヌちゃんの作者。ペドロと、マドレーヌちゃん、似てます^^ (なみ@えほんさん 50代・その他の方 )
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