神秘的なウミガメの生態を、ひとコマひとコマ丁寧に読み進めて行く絵本。 ウミガメがどのように産卵し、子ガメが海に出て、また生まれた海に戻るまでを描いています。 作者は、『おじいさんとヤマガラ』(小学館)、『ふしぎな鳥の巣』(偕成社)など、たくさんの自然絵本を手がけている鈴木まもるさん。 美しく大迫力のタッチで描かれた絵は、まるで音や空気まで伝わってくるほどの臨場感に溢れ、読んでいる誰もがウミガメさんがんばれ!と応援したくなることでしょう。
ウミガメが涙を流しながら産卵し(本当は体内の余分な塩水を出しているそうです)、卵を残して海に返って行った後、卵から孵った子ガメたちは、誰に教わるでもなく、静かに海を目指し進み出し、あまたの試練に立ち向かっていく___。
この絵本を読んで、その試練の大半は人間が作り出してしまった事に気付かされます。 自動販売機の光に誘われて道路に出てしまったり、クラゲと間違えてペットボトルを食べてしまったり、海に漂流したロープにからまってしまったり、多くのウミガメが大人になる前に死んでしまうのです…。
日々の暮らしの中で、自然を大切にする事の意義は、頭では分かっていても、具体的にイメージすることは難しいですね。けれども、この絵本でウミガメの生きる姿を見ているうちに、なぜ大切にしなければいけないかが身につまされます。
ウミガメの生態について、水族館という場所ではなく、絵本を通して学べることの貴重さを、感じさせてくれる一冊です。
(福田亜紀子 元絵本編集者)
誰もいない夏の砂浜。 海の中からアカウミガメのメスがやってきました。穴をほってたまごを産みます。 約2ヶ月たつと、あかちゃんのカメが生まれます。 子ガメは明るいほうをめざしてゆきます。 その先には広い広い海が待っています…。
ウミガメのお話というと、産卵、ふ化までを描いたものが多くありますが、本作ではその後の海の世界がたっぷりと描かれます。 どんなものを食べ、どんな敵から身を守り、どんなふうに成長していくのか。 なかなか目にすることのない、カメの生きぬく姿をご覧ください。
出版されたころからこの作品に目をつけていました。
(今これを書いている3か月ほど前に出版されています。やっと読みました〜!)
想像通り、いえいえそれ以上に良かったです。さすが鈴木まもるさんです。
鈴木さんの鳥関係の絵には定評がありますが、カメだって、見ようによっては海の中の鳥みたいな生き物です。
描き方に“愛”を感じました。
この作品は物語的ではなく、むしろ科学絵本の要素が大きいです。
夏になるとよくテレビでも取り上げられているウミガメの産卵シーンから始まり、その時々に襲ってくる危険を潜り抜けた子ガメたちが黒潮にのって、遠いアメリカ大陸の海岸の方へ移動して暮らし、また産卵期に日本を含むアジアの方へ戻ってくるのだよ〜という内容でした。
(この絵本では〈カルフォルニア〉の海と限定されていますが、そこだけでなく、実際はかなり広範囲に生息しているようです)
絵本の中で、鈴木さんは子ガメたちが海を渡っていく中での危険をいくつも上げていました。
こんな危険もある。こんな事態が起こることもある。という風に。
絵本でこういった生きものの旅を紹介するときって、どちらかというと、あまりそういう危険なことばかり取り上げないものだと思っていたので、
気になってちょっと調べてみたら、
この絵本のモデルと思われる「アオウミガメ」は今絶滅危惧種になっていました。
絶滅の原因はいろいろありますが、一番の原因は人間が海岸の埋め立てをしてしまって、安全に産卵出来る場所が減ってしまったことと、ウミガメの卵やウミガメそのものを密漁する人間がいることが大きいようです。
(絵本はあくまでも成長記録として描かれててで、絶滅危惧種であることについては触れていませんでした)
1人でも多くの子どもたちにこの絵本に触れてもらいたいなと思います。
そして、こういったものに出会ったことで、これから未来(さき)の地球で暮らす生き物のことを考えられる大人になってくれたらいいなと、思わずにはいられません。
多少細かい部分もありますが、鈴木さんの絵なので、ほとんどのページが遠目もききます。ぜひ読み聞かせやブックトークなどで子どもたちに紹介していきたいです。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子21歳、女の子16歳)
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